【口福のおすそわけ 394】ニッポン生まれの中華料理~その2~ 竹内美樹

  • 2021年12月19日

竹内氏

 ニッポン生まれの中華料理、第2弾。前号「冷やし中華」のお次は「天津飯」。「かに玉」としておなじみの、カニ入り中華風オムレツ「芙蓉蟹(フーヨーハイ)」をご飯に載せ餡(あん)をかけたモノ。実は日本生まれで、料理に冠した地名の天津には存在しないらしい。

 芙蓉蟹というと、北京では卵白のみで芙蓉の花のように真っ白に仕上げた、日本名「カニ肉の淡雪煮」を指すそうだ。全卵を使うのは広東風だそうで、地方によってさまざまなタイプがあるが、コレをご飯に載せて食す地域はないという。

 そもそも日本人は、深川丼のようなぶっかけ飯や、天丼、うな丼のようにタレをご飯にしみ込ませた丼物など、古くは江戸時代からご飯に何かを載せて食べる習慣がある。一方、中国には、飯茶碗や麺用の大きな丼はあっても、丼メシ用の食器「丼鉢」自体がない。おかずをご飯と共に盛った「蓋飯(ガイファン)」はあるが、皿盛りだ。

 天津飯の誕生については諸説ある。東京浅草にあった「来々軒」が、戦後八重洲で店を再開した際、早く食べられる料理をという客の求めに応じ、かに玉をご飯に載せ、酢豚の餡を応用した甘酢餡をかけて提供したのが始まりとする説、同じく戦後、大阪「大正軒」の店主が、天津に根付いていた「蓋飯」をヒントに考案したとする説が有力。

 ちなみにこの天津飯、関東では「天津丼」、関西では「天津飯」と呼ばれることが多いそうだ。また、餡も異なり、関東では甘酢餡、関西ではしょうゆ餡だそう。

 同じく餡かけ仲間で丼物の「中華丼」も、中国には存在しないという。肉、魚介類や野菜を炒め、スープで軽く煮てとろみをつけた「八宝菜」をご飯にかけた丼。八宝菜は「五目旨煮」とも呼ばれるが、名称の数字はいずれも具材の数ではなく、種々の物が入り混じっているという意味だ。

 文献によれば、昭和初期には登場していたようだ。賄い料理として生まれたという説が根強いが、発祥の経緯は定かではない。五目餡かけ焼きそばがあるのだから、丼好きの日本人なら餡をご飯にかけたいと考えるのは当然だろう。

 最後は、近頃テレビCMでよく見かける、冷凍ラーメン売り上げナンバーワンという「横浜あんかけラーメン」。コレは神奈川県のご当地ラーメン「サンマー麺」で、もやしや白菜、豚肉などが入った餡かけラーメンだ。

 横浜中華街「聘珍樓」で、昭和初期に考案されたという。元は賄い料理だったそうだ。「生馬麺」と書くが、生は新鮮なという意味で、馬は上に載せるという意味だとか。実は母の大好物。とろみの付いた汁が美味だと言う。天津飯も中華丼も生馬麺も皆餡かけだ。日本人はとろみ好きなのだ。

 日本のラーメン自体が「日式拉麺」と呼ばれ、中国の麺料理とは全く異なる。そう、ラーメンもニッポン生まれの中華料理といえよう。ラーメンについて語り始めるとキリがなさそうなので別の機会に譲るが、日本人の外国料理アレンジ力がスゴイことは間違いない。考えてたら、お腹が空いてきちゃった!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
 
 
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