【口福のおすそわけ 376】魔法の水 竹内美樹

  • 2021年7月30日

竹内氏

 前回、「ビア缶チキン」にチャレンジした様子をご報告した。丸鶏を肉が軟らかくなるといわれる塩分糖分濃度それぞれ5%のブライン液に前夜から浸け込んだと書いたところ、もう少し詳しく説明してほしいとのお声をいただいた。

 ブライン液とは、肉などをブライニングする際に使用する調味液のことで、ブライニングとは、食品を一定時間この調味液に浸け込む工程のこと。ブライン液から取り出して加熱すると、肉がとても軟らかくジューシーに仕上がる。

 「ブライン」という名は、塩水を指す英語「brine」が語源。ブライン液といえば、元は塩水だったようだ。その昔、船乗りがたまたま海水に浸かってしまった肉を焼いて食べてみたところ、軟らかくジューシーで美味だったことがキッカケでできた調理法という説もある。シンプルに海水程度の濃度の塩水を使うレシピもあるが、今は保水力がありうま味や甘味もアップする砂糖を入れるタイプが主流になっている。

 筆者もよく、ブライン液のお世話になっている。特に火を入れるとパサつきがちな鶏胸肉には欠かせない。ブライン液に一晩浸けた鶏胸肉は、煮ても焼いても驚くほどしっとりジューシー、かつ軟らかく仕上がるのだ。一体どんな仕組みなのか? 調べてみた。

 肉は多数の筋線維からできており、その中にある筋原線維タンパク質は、加熱すると変性し、収縮する。このとき、肉が縮むことで水分が流れ出てしまう。コレが、肉を加熱し過ぎると硬くなり、パサつく原因だ。

 だが、ブライン液に浸け込むと、塩と砂糖がイイ仕事をしてくれる。まずは塩。先述の筋原線維タンパク質は、水には溶けないが塩水には溶ける性質だそうで、塩水に浸けると溶解し、軟らかくなる上、加熱しても収縮しなくなるという。また、筋線維もほぐれ筋線維間が広がり、そこに水分を蓄えられるようになる。それがしっとりジューシーのヒミツの一つらしい。

 砂糖はそれ自体保水性が高い上、タンパク質と水分を結び付ける性質があり、肉の水分を保つのに役立つ。また、タンパク質の熱変性を遅らせる効果があるため、加熱による収縮を抑えられるという。これが二つ目のヒミツだ。さらに、塩で溶けた筋原線維タンパク質の一つミオシンが、加熱によりゲル化し、肉汁を逃がしにくくするというのが三つ目のヒミツ。

 やり方は、水100ccに対し、塩5グラムと砂糖5グラムを入れて混ぜ、肉を浸けるだけ。ボウルやバットよりビニール袋の方が、ブライン液が少なくて済むのでおススメだ。塩分は5%を超えると、逆に肉が硬くなるので要注意。筆者は、塩分を海水と同じ約3・5%程度にとどめ、糖分は5%という自己流の比率にしているが、肉は間違いなく軟らかくなる。ちなみに、魚でも臭みが取れふっくら仕上がる。まさに魔法の水である。

 今夜もブライン液に浸けた肉に、おいしくなぁ~れ♪と呪文を掛け冷蔵庫へ。明日の口福が楽しみだ。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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