「日本一の旅館を作る」
これが私の幼い頃からの夢です。
私の家族は、旅館を経営しています。そこではたくさんの人たちが毎日一生懸命働いています。そんな人たちの働く姿に憧れ、いつからか「私もここで働きたい。そして、この旅館を日本一の旅館にしたい。」そう思うようになりました。
しかし、わたしはその夢のために努力したことはありませんでした。なぜなら、努力をしても、結果がついてこなければ、努力は無駄になると考えていたからです。それまで自分が努力してきた時間が無意味になり、そのうえ、望まない結果に傷ついてしまうのではないかと思っていました。だから私は、自分の夢があっても努力することはありませんでした。
そんな考えがあったせいか、私は何の努力もしないまま、気づけば小学五年生になっていました。
ある日私は、旅館で女将をする伯母と二人で出かけました。二人で会話を楽しんでいると、伯母は私の将来の夢を尋ねてきました。私は、「夢はあるけれど努力はしていない」と話しました。伯母は当然のように努力しない理由を尋ね、答えた私にこう言いました。
「努力して失敗した時の悲しみより、努力して成功したときの喜びのほうが、私は大きいと思うよ。それに、努力せずに後から後悔するよりも、やるだけやって失敗に終わったほうがかっこいいじゃない。」
私ははっとしました。この言葉に納得した私は、今までの考えを改めることになったのです。
それ以来、私は夢のために少しずつ努力するようになりました。「日本一の旅館を作る」そのためには、海外から来た人も楽しめるようにしたい。そこで私は英語に力を入れるようになりました。すると、今まで苦手だった英語が得意教科になりました。また、旅館で働いたときに美しい字でおもてなししたいと思い、これまで習っていた書道により一層励むようになりました。すると、昇段したり、コンクールで賞をもらったりするようになりました。
私は、努力し始めて気づいたことがあります。それは、努力することは夢に向かう力になるということです。今までの私は、何事に対しても消極的にしか考えられず、ほめられても素直に喜ぶことができませんでした。そのため、何事も尻込みをして、挑戦することができませんでした。けれど、努力をすることで、少しずつ自分が変化していくのに気づきました。努力を続けることで物事がうまくいき、気持ちも前向きになりました。また、ほめられると素直に喜べるようにもなりました。そうすると、新しいことに挑戦する力が湧き、さらに努力を続けられるようになったのです。
努力しても、良い結果だけが返ってくるわけではありません。しかし、結果がどうであれ、努力すれば何かしら得られるものがあります。それは私にとって、挑戦する力を与えてくれること。私は伯母のおかげでそれに気付くことができました。
以前の私のように、努力しても無駄だと考えている皆さん、まずは挑戦してみませんか。今、何かに向かって努力している皆さん、諦めずに努力を続けてください。そうすれば、自分の中から夢に向かう力が湧いてくるはずです。だから私は、伯母の言葉を胸に、夢に向かって、努力しつづけます。