【体験型観光が日本を変える7】郷土を思う住民力 藤澤安良


 多くの政治学者、マスコミの予想を裏切り、米国の次期大統領選でトランプ氏が勝利した。そのニュースは全世界を駆け巡り、歓迎と心配が交差した。トランプ氏への変化を望む大きな期待が、熱烈で揺るぎない支持者やファンはもとより、多くの有権者を動かした、などと情勢を読み違えた学者が分析している。

 先の東京都知事選では、組織政党が応援した候補ではなく、支持政党を持たなかった小池氏が圧勝した。既成政党では変化は望めないとした住民力の意思が選挙を突き動かした勝利であろう。

 英国のEU離脱の国民投票でも予想を覆しての離脱決定となり、離脱支持者までが驚きを隠せなかったという。いずれも住民の深層心理を推し量れなかったマスコミや学識経験者の敗北と言えよう。

 全国各地にうかがっているが、総じて「役所」への期待は薄く、不満ややるせなさが渦巻く。政治家の暴言も後を絶たない。親身になって、地域のためにと口先では言うものの、自己保身や責任回避がほとんどで、トラブルや重要な局面で正面から対峙してくれる人物がとても少ない。

 つまりは、首長は当然だが、それぞれの持ち場、立場の職員も、議員も、私が最後まで責任を取るという人がいないなら、政務活動費の不正使用も、税金の無駄遣いも、消えた年金問題などの不祥事もなくならないはずである。

 クビにならないから、給料が安定しているから、仕事のノルマや成果がなくて気楽だから、などの動機で就職を考えた者も少なくない。東京の豊洲市場移転の問題だけではない。つまりは、そんな人間には地域振興も到底できるとは思えない。地方創生が進まない要因でもある。

 そんな中にあって、地方創生の切り札でもある体験型観光の推進は、責任回避や職場放棄は許されず、熱意と覚悟のある人物でしか成功しないことが明らかである。体験型観光の推進での失敗は、人物の問題とともに、先駆的事例にシステムやノウハウを学ばないことにある。

 単年度成果主義では成果が表れず持続できない。さらには、住民が担い手の主役であり、その意識醸成は欠かせない。必ずしも、今までの価値観や思いとは違う所にあることをしっかり伝えなければならない。

 田舎には、光合成により酸素を供給する豊かな自然や、米、野菜、果物、山菜、魚介類などの食生産現場としての大きな役割がある。高齢化が進むが、今なら高齢者の技と知恵を伝えられる。そして、郷土の食材を使った田舎料理など、都市では真似のできない価値があふれている。それらに気づき、自信と誇りを持ってほしい。自らが田舎を卑下していては未来が開けない。真に郷土を思う住民力が、日本を変えることになるはずである。体験型観光振興は人材育成そのものである。

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