【体験型観光が日本を変える50】人間教育の重視を 藤澤安良


 世界の先進分野で日本のお家芸とも言われる自動車産業での相次ぐ無資格社員の検査は、華やかな東京モーターショーに影を落とす結果となった。政府系の商工中金の不正融資問題も不正融資が2600億円にも上った。情けない残念な国になった。

 家庭での虐待件数が3万件を超え、家庭での居場所がない子どもが増えている。親が子を守らずして誰が守るのかと言わなければならない。そんな中にあって、学校教育の現場でも、文科省の調査で2016年の児童生徒のいじめの認知件数が過去最多の32万件を超え、不登校18万件、暴力行為は6万件近くに上り、自殺者は244人となった。若い命を自らが絶たなければいけない現実は変えなければならない。

 児童生徒の生活では、学校が終われば、校庭で遊ぶ間もなく、塾へ行き、夜遅くに帰宅する。友達と一緒に公園や地域で遊んでいる姿をほとんど見かけない。コミュニケーションの機会が著しく減少し、人間関係構築能力を高める時間がない。せいぜいスマートフォンでの文字のやり取りとなる。

 大人の社会でも、人が人との関わりを持たなくてよい社会になりつつある。鉄道駅の切符の窓口も自販機になり、改札もICカードになり、空港も、ホテルも自動チェックイン機が増え、通販でほとんどの品物が購入できてしまう。その支払いもカードが主流となり、現金を預けたり、引き出したりもATMとなった。スーパーも有人レジが空いているのにセルフレジに人が列をなしていた。人への気遣いや配慮、対話がどんどんなくなっていく。

 自己中心的になる流れができている。女性と付き合ったことがない20代の男性が53・3%もいるという。結婚しない男性が増える一方である。それは、結婚相手が女性であることから、同時に女性も未婚者が増えることになる。所得が少ない若者も多く、アイドルや漫画、ゲームなどの疑似恋愛や時間の過ごし方が大きく変化しそれで満足している。女性とのコミュニケーションや恋愛の駆け引き、対応が面倒だと考えたり、うまくいかないことを心配したりと、リスクが多いと考える人が増えている。努力や挑戦や勇気が湧いてこないのであろう。

 教科時間の奪い合いのような学校教育の現場であるが、家庭での人間教育もままならないのなら、人間教育を重視しなければ、学力も持ち腐れとなり、悪い方にも使われてしまう。

 特別教育活動や総合的な学習の活用が重要になる。その内容の充実に力を注がなければならない。特別教育活動や総合的な学習には、テーマパークも、名所旧跡も、著名観光地も、今の時代にはもういらない。体験交流を重視した日程にしなければもったいない。農山漁村での民家ステイ、農林水産業や自然などの体験活動は、その重要性を四半世紀にわたって提案し続けているが、コミュニケーション能力にも、心の豊かさにも、人間力向上にも、その効果は大きい。日本が変わることになる。

 
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