【体験型観光が日本を変える48】今こそ地方に光を 藤澤安良


 衆議院選挙戦が終盤にさしかかった。1票の格差が1・98とわずかに2倍を下回る程度となった。小選挙区は東京で25区あるが、中四国の少ない県では2区しかなく、その差は著しい。現在は小選挙区で地域代表の色合いが濃い。都市選出の国会議員による田舎のことを考えた上での発言はほとんどない。

 食料自給率(カロリーベース)が38%にまで落ち込んでいる。輸入食材に頼り切っている現状は、武器だの、軍事費だのと言う前に、食料を止められてしまえば、飢え死にする国であるという自覚はあるのか。全くなさそうである。

 減反政策、耕作放棄地、獣害、低い生産性などから、後継者が不足し、若者が都市へと流出し、1次産業従事者が減り続けている。とりわけ農業者は1960年に1400万人だったのが、2016年には182万人を下回っている。まさに桁違いの減り方である。従事者の平均年齢は約67歳と「定年後農業」となっている。

 そんな過疎高齢化に拍車がかかる生産現場の実態とその背景は十分に理解されていない。政治家は、食料と酸素の供給現場である自然豊かな田舎の重要性と価値を理解し、政策に反映しなければならない。

 政治家だけの問題ではない。地方自治体の職員も、地域振興、地方創生、地域経済、税収増加などに関心が薄すぎたり、全くなかったりである。公務員になった動機が、景気に左右されず倒産がなく安定しているからなどと、自分の身分や所得の都合のみである。優先順位が違う。

 公務員は、一番に社会や地域に貢献したいと思う人ばかりがなるべき職業である。少しは思っていても、行動に表れず、何もしないというなら、なかったことになる。あまりにも他人事の人が多すぎる。当事者意識がなさ過ぎる。関係がない人など1人もいないはずである。

 ふるさと納税に熱くなっている自治体もあるが、原価率があまりにも高い商売は成り立たない。価値の安売りは、特産物や知識の価値を自らがおとしめることになる。観光振興や交流人口の拡大(宿泊、体験、飲食、娯楽)により経済的な活性化を図らなければならない。それに付帯して、新たな商品の開発や特産品の販路拡大につなげていく地域外貨獲得戦略が求められている。税の基となる経済の拡大こそが税収拡大である。

 行政側は、地域振興という錦の御旗のもとで、一つになって課題に立ち向かわなければならない。税収が上がらなければ、行政の存続も危うくなってしまう。公務員が安定しているなどと思っている場合ではない。

 志のある首長がいる自治体で何度か自治体職員向けの研修を担当したが、意識醸成と政策立案能力、あるいは地域が取り組むべき地域経済活性化に大きな効果があった。今こそ、地方に真に光が当たる変化の時にしなければならない。この選挙費用が無駄にならず、未来につながることを望みたい。

 
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