【体験型観光が日本を変える357】新札発行、悲喜こもごも 藤澤安良


 昨年から続く物価高騰に歯止めがかからず、7月に入り、700品目の値上げが予定されている。家計への影響は大きく、政府は所得税や住民税での4万円減税を実施する。さらには、8月から10月まで電気代やガス代の補助も予定されている。

 減税の4万円は何に使うかのマスコミの街頭取材では、生活費や貯蓄に回すなどが庶民の声として流れていた。このような経済状況では旅行費用に回すようなマインドにはならない。

 パリ五輪まで20日後に迫り、多くの種目で出場権者が決まっていく。現地には観戦に行かずともテレビ観戦を楽しみにしている人も多い。旅が縮小する原因にもなりかねない。1ドル=160円という大幅な円安の最中、せっかくの新紙幣が発行される一大イベントが弱い円となっては寂しい限りである。

 幕末から明治の近代化の多くの分野で基礎をつくった、渋沢栄一が新1万円札の肖像である。とても残念なタイミングである。渋沢栄一の志と行動力を再確認し、学び直す時である。私も大河ドラマや生誕地訪問で理解を深めた。

 新札発行は販売事業者にとっては、自動販売機や券売機の新札対応機への改修や機種変更には数百万円が掛かるとあり、自販機事業者は大特需であるが、自販機を使う販売事業者は大きな出費はそのまま痛手である。自販機機種変更減税も必要になる。

 情報化社会の現在、人や社会を動かすには情報発信は大事であり、ポスターや新聞などの紙媒体、テレビ・ユーチューブなどの映像に加えて、SNSなどネット情報が氾濫している。注目を集める東京都知事選も情報戦である。

 一方で、地方には注目度が低いが、潜在的な田舎や地方への憧れと魅力は理解されつつある。テレビ各局でも手を変え品を変え露出している。

 例えば「ポツンと一軒家」の視聴率が高い。田舎へのあこがれ、豊かな自然と自給自足に近い「食」、人生観が変わる番組である。出川哲郎の「充電させてもらえませんか」は本人の人気もあり、味覚と温泉を絡めて人情をクローズアップしている。

 さらには、「ローカル路線乗り継ぎバスの旅」や「千原ジュニアのタクシー乗り継ぎ旅」も地方の味覚やお菓子や果物、観光施設や道の駅などを紹介しながら、人情につなげている。

 人気番組の共通項は、豊かな自然、新鮮なとれたて食材による食事、艱難(かんなん)辛苦を乗り越えた人々の生き様、田舎に暮らす人々の優しく豊かな人情。それら全ては視聴者にとって新鮮な非日常である。これらの要素は新しい時代の旅の条件になる。

 残念ながら、旅館・ホテル、ドライブインなどの飲食に関わる業者が、業務用、冷凍、輸入、出来合いの惣菜などを利用しているところが多い。人手不足も相まって地産地消や手作りが難しい課題となっている。しかし、それはマーケットの望む方向ではなく、いずれ見放されていくことになる。

 さらには、インバウンドに頼らない、秋に間に合う国内観光の低いマインドの起爆剤となる政策が求められる。

 
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