【体験型観光が日本を変える34】自然、食、人が旅の目的 藤澤安良


 沖縄の梅雨明けのニュースが流れた。ほぼ同時に北陸、関東、東北の各地方では雨の日が続くようになる。本格的な梅雨入りとなった。すっきりしないのは空模様だけではない。閉会した国会での残された議論と東京都の市場移転の行方である。

 国会議員の人格否定の暴言、暴行にも驚くばかりである。票が気になるだろうが、票は人の思いの表現の結果であり、有権者も、スタッフもすべて人である。人をないがしろにするようでは議員どころか、人として資質が問われる。そんな中、首都東京の都議会議員選挙もスタートし注目を集めている。しかし、地方の活性化が大命題である。

 日本は北海道から沖縄までの気候が大きく違う。それは、景観や動植物の生態系の違いであり、農林水産物や食文化の違いでもある。日本酒の味も地方により傾向があり、精米度数や純米など製法により、また杜氏や酒蔵によって大きく違う。

 修学旅行の誘客に関して、旅行会社の社員や地方の学校の先生の一部は、「田舎から田舎へ行きたいとは思わない」などと言う。方言も、歴史も異なり、顕微鏡やルーペで見るに及ばず、同種の植物や動物の大きさも異なる。同じ地域はあるはずもなく、同じ田舎とくくる考えでは、見るべき差異も見つけらず、学びもない。それらの違いこそ、非日常であり、大きな魅力であり、旅として訪れる価値でもある。

 修学旅行を受け入れる大型の宿泊施設の食事の多くは、輸入、冷凍、工場加工の業務用の出来合いの総菜などのオンパレードある。カレーライス、ハンバーグ、スパゲティ、焼きそば、豚カツ、唐揚げ、焼き肉、バーベキューも、インスタント食品、レトルト食品だとすると食の違いは見つけにくい。コストを気にするのは当然だか、お腹がいっぱいになればいいなどと考えているなら、旅の魅力を半減させ、顧客満足度は高まらない。食をないがしろにする宿泊施設は、ボディブローが後で効いてくるように、いずれ苦戦することになる。食事は地産地消に徹することである。

 人も同様に似た人はいるが、1人として同じ人がいない。その人との出会いが魅力であり、大きな学びのもととなる。しかし、旅の多くは、名所旧跡、自然景観に重点が置かれている。「人」にスポットが当たった旅行企画は少ない。観光地のガイドや体験プログラムのインストラクターなどは、人と人の関わりを大切にするケースが増えつつある。一方通行の説明型ではなく、双方向での交流コミュニケーションを重視するような人材育成を行っている。高齢者の知恵や技や匠、体験談や人生訓、多岐にわたる分野でのスペシャリストの生き方、智恵や技の後世への伝承など、人間関係が希薄になる一方の今日、人が人に学ぶ機会が潜在的に求められている。

 日本の自然と田舎の景観、農山漁村の営みと食、たくましく生きる人が、旅の目的提案であるべきである。地方創生の実現はそこから始まる。

 
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