【体験型観光が日本を変える299】4月、新たな門出に思うこと 藤澤安良


 私と同じ年に生まれた音楽家、坂本龍一さんの訃報が届いた。音楽に疎い私でも聞いたメロディが追悼のニュース番組から聞こえてきた。悲しく寂しい出来事である。元気な時には健康のありがたさを考えないものである。与えられた人生の残りの時を大切に生きなければならないと改めて思った。

 新型コロナウイルスに関する行動制限が解除されつつある中で、賃金安と円安、そして、4月には5千品目の値上げが予定されており、物価高を背景に生活に厳しい新年度が始まった。

 入社・入庁式も入学式も相次いで実施された。希望に満ちあふれて多くの若者が新しい世界に飛び込んでゆく。いい人生の門出となってほしいものである。同時に大手企業を中心に賃上げが決定したり、賃上げ機運が高まり、中小企業まで広まることを期待したい。

 観光業界は、いったん終わったかのように見えた、全国旅行支援が復活し、旅行需要を喚起している。また、訪日観光客数は円安効果もあってか見た目にも増え続けている。

 私は過日、主要7カ国首脳会議(G7サミット)の開催が予定されている桜満開の広島市を訪ねた。ロシアのウクライナ侵攻、ベラルーシへの戦略核配備など平和が脅かされている今、平和や原爆への関心が高まり、G7サミットの先取りもあるのか、平和公園や世界遺産の原爆ドームは日本人より圧倒的に外国人の方が多く、日本国内ではないかのような光景だった。

 近くには世界遺産の宮島厳島神社もあることから広島は訪日外国人の人気都市である。しかし、日本の田舎に外国人の姿はまだまだ少ない。政府が進めるインバウンド政策の中でも、関東圏、東海圏、関西圏などの三大都市圏以外の地方への誘客が大命題となっている。人口減少が進む地方の活性化は、交流人口拡大や観光振興が有効な手段である。

 その田舎には、豊かな自然、農山漁村の食生産現場等と資源には恵まれ、それらをどのようにアレンジし、体験プログラムなどのコンテンツに仕上げ、SDGsプログラムサステナブルツーリズムやアドベンチャーツーリズムに形を整えること。また、食事も地産地消の和食に徹して商品化し、それらを一元化し情報発信をすることになれば田舎への誘客の可能性は無限大である。

 何事も同じだが、思いつく人も考える人もいるが、最後はそれを行動に移せるのかどうかが結果の分かれ目である。残念ながら、全国的に変化や進化に向かわない。みんなどこか他人事で、リスクを負わない。新たなチャレンジをする人も、信念を持って動き続ける人も少なくなっている。人材確保と人材教育はセットでなければならない。

 課題の少子化も人数だけの問題ではない。併せて、教育の充実も図らなければならない。出産や育児の目先の問題だけではない。高校や大学の学費、生活費、家賃、通学費の負担に対する心配まで及んでいる。学費の無償化を進めてもそれだけでは済まないが、そこに切り込まなければ解決はできない。4月1日、「こども家庭庁」ができた。抜本的な政策の断行なくして未来はない。

 
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