【体験型観光が日本を変える296】体験から学び、考え、行動する 藤澤安良


 このところ温かくて、さわやかな5月のような気候が続いた。例年より早い3月15日ごろにも桜の開花が予想されている。そんな3月11日は、東日本大震災から干支(えと)が一回りする、12年もの歳月が流れたことになる。

 依然として避難者数は3万人を超え、原発事故に見舞われた福島県では2万人以上が県外で避難生活を送っている。震災の死者は3月1日時点で1万5900人、行方不明者は2523人。1年間で行方不明者が1人も見つからなかった。歳月の壁でもある。

 一方、トルコ南部を震源地とする大地震発生から1カ月。トルコと隣国シリアで死者5万4千人に上るなど甚大な影響を与えた。自然災害の脅威に人間はまだまだ無力である。

 ロシアのウクライナへのミサイル攻撃は原発の施設内にも着弾している。人間ができること、やってはいけないことの知性と理性での分別が求められている。

 政府、東京電力は福島第1原子力発電所の処理水を23年夏までに海に放出し始める方針だ。さんざん風評被害に悩まされ続けてきた地元漁業者は当然反対している。

 汚染水の解決もできず、原発事故の影響をこれだけ受けながら、政府は原則40年、最長60年と定める現状の枠組みを維持したまま、60年を超えて原子力発電所を運転できるようにする法改正案を決めた。今ある原発を活用し、電力の安定供給と脱炭素につなげる方針である。

 しかし、もっと再生可能自然エネルギーの活用を進めなければならない。連続テレビ小説の「舞い上がれ」の舞台ともなった長崎県五島市では、浮体式洋上風力発電施設が増設されることになっている。その施設をSDGsプログラムなどサステナブルツーリズムへの目玉商品としている。

 見る観光から体験型観光へは当然の流れであったが、今後はさらに、自らの体験から学び、考え行動するための動機を与える旅が求められている。

 日本が遅れをとっている。気象変動への対策やエネルギー問題、食料自給率低下や1次産業の衰退、少子化と人口減少、地方の衰退など課題は山積しており、課題解決型の旅のテーマには事欠かない。

 つまりは、「そんなの関係ない」と思っていた多くの他人事が回りまわって自分にも影響が及んでいることを知り、自分事として考え、知識だけに終わらず、その解決に向けて行動に移すことが必要になる。

 4月3日からの朝ドラは高知県出身の主人公の植物学者・牧野富太郎博士の生涯を描いた「らんまん」である。牧野博士は「雑草という草はない」として1500種類の植物名を命名した人物故に、高知県各地で草花ガイドプランを用意し、従来の観光施設や体験プログラムに加えて、草花にもスポットを当てて、四季折々の彩りを観光資源として花を添えたいと考えている。

 私は高知県のアドバイザーである関係から、現地でガイド研修を行っている。温暖化など気候変動等の自然環境の変化に草花がどう適応しているのか気づき行動に移せる学びの旅がサステナブルツーリズムを開花させることになる。

 

 
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