【体験型観光が日本を変える29】豪州の観光地で考える 藤澤安良


 オリンピックを前に職場や飲食店について、受動喫煙の健康被害を防ぐために禁煙にすべきとの議論が高まっている。先進国の多くのホテルや飲食店、空港、駅などがほとんど禁煙となっている。
「どこで煙草を吸えますか」と尋ねる人に「アウトサイド」と一言のつれない返事。日本は愛煙家にとって分煙やスペースを設けるなどとても親切な国である。マンションのベランダ喫煙でのトラブルも多発している。オリンピックを契機に先進国の先頭を行くべきであろう。

 過日は、オーストラリアの定番、シドニーとメルボルンを訪ねた。もちろんホテルもレストランも喫煙はアウトサイドである。5月というのに日本では連日30度に迫る暑さが続いている。秋が深まりつつある南半球の当地は19度でとても過ごしやすく良い季節を迎えていた。ゴールデンウイークも過ぎたのに羽田発シドニー行きのジャンボジェット747(353席)がほぼ満席だったが、日本人は3割程度と少なく、オーストラリア人はもとより、アジアや欧米系の旅客が多かった。深夜便の効果が奏功し、ハブ空港としての役割も高まっている。

 シドニー空港から市内までのアクセスは、10キロ程度の距離をトラムで約10分と便利だが、料金は17・9ドル(約1600円)で日本の約8倍である。日本車は人気で日本の価格の2倍以上と聞く。中心部から約30分という郊外の一戸建てで、8人が住む家の8畳1部屋を2人でシェアし、1人が6・5万円と言うから驚きである。レストランなどの飲食の物価も高く日本の2倍程度であった。日本からワーキングホリデーで来ている若者数人に話を聞いたが、アルバイトの賃金は時給1500~2千円と日本の約2倍である。そこそこバランスはとれているのだろう。

 街はシドニーのハイドパークやメルボルンの王立植物園、世界遺産のカールトン・ガーデンなど、芝の緑は美しく、樹木は大きく、面積が広い公園が多い。豊かな自然が街の中にあることがステータスになる。

 シドニーから約100キロ、車で1・5時間で世界遺産のブルーマウンテンズ国立公園のエコポイント展望台に到着。グランドキャニオンのように雄大で爽快な風景が展開する。地肌の色ではなく、ユーカリの木から揮発されるオイルが太陽光に反射し、青く見えることからその名が付いたという。まずはシーニックスカイウェイから270メートルのカトウーンバ滝と伝説の奇岩スリーシスターズを展望し、52度という世界最急勾配シーニックレイルウェイで谷底へ。そこではユーカリの大木が生い茂る豊かな森と石炭坑道の跡を見学し、そして別のオーストラリア最大規模のケーブルウェイ(定員84人)に乗り継ぎ、再び頂上に戻る。

 さすが屈指の観光地で、他の観光地も満足度が高い。しかし日本は食事が安く、おいしい。食料品も、衣料品も安くても良いものがある。交通費もそれほど高くない。世界最高の観光地である。自信を持とう。地方にも大きな可能性がある。

 
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