【体験型観光が日本を変える196】心の豊かさと人間力を高めよう 藤澤安良


 新しい年を迎え、年始には東京の新型コロナウイルス感染者が2千人を超えた。連日高止まりしており、再び緊急事態宣言が発出された。昨年は新型コロナに振り回された年であった。今年も厳しい年明けとなった。この困難な現状を打破し、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、アスリートの活躍する姿に大きな声援を送れる年になってほしいものである。

 昨年はコロナ以前からの社会問題が浮き彫りになり、より深刻化する年でもあった。ネットでの誹謗(ひぼう)中傷で死に至った人が少なくないことから、ヤフーはネット上の誹謗中傷投稿の抑止対策を改定し、人工知能(AI)を積極的に活用し削除対象を全ての投稿サイトに拡大するという。人をおとしめて自分が優位になんか立てない。

 介護施設での虐待件数が644件に上っている。やさしく見守り介助や介護すべきところでの事件は嘆かわしい限りである。また、家族や親族による高齢者への虐待も約1万7千件に上り、守るべき家族からの虐待も人の道から外れている。

 子どもに無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」が2019年から1368カ所増えて12月に5086カ所となったと報じられた。本来は家庭でとるべき食事もままならず、子どもの貧困も拡大している。

 観光産業は人々の安心安全で幸福で人間的な暮らしの上に成り立っている平和産業である。コロナ禍においてGo Toのように直接経済効果を狙う政策もあるが、国民が食べられて、虐待されず、いじめられず、おとしめられず、格差の少ない平和で心豊かな社会を目指すことで、旅行に行ける国内人口を増やす政策も必要になる。

 渦中のGo Toトラベルは年末28日で一時停止となったが、駆け込みで利用した人も少なくない。宿泊施設や観光施設では10月以降の集客は一様にGo Toのおかげであると口をそろえる。

 Go Toがなくても集客が見込めるクリスマスや年末年始であるにも関わらず、28日以後の予約済みのキャンセルが続出している。言い換えれば、それぐらい危機感が国民に広がっている証でもある。しかし、単に旅行代金の安さ故に動いた人も多いとも言える。そんな中で、Go Toや、都道府県、市町村の割引を合算できたりすることから、この機に乗じて基本宿泊料を上げてもうけに走った宿もある。

 国策や地方自治体の苦しい財政事情の中から補助金を捻出して、あらゆる制度から割引を行ってきたが、それを基本料金の値上げにとどまらず、水増しや架空請求をする宿やローカル旅行会社まで存在する。持続化給付金をだまし取った詐欺行為と同じ、公金横領、世間を冒涜(ぼうとく)する行為である。そのような不正をするような観光関係者にコロナ後の新しい時代は開けるはずがない。

 そして、コロナ後の旅行需要が金額ありきにならないように、真っ当な観光産業として生き残るには、知恵も努力も行動もおろそかにしてはならない。今年こそ、心の豊かさと人間力を高める、旅の新しい価値創造に向かわなければならない。

 
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