【体験型観光が日本を変える18】文化、習慣の理解 藤澤安良


 昨年の訪日外国人旅行者数は2403万9千人に及んだ。全国各地を旅して、ホテルに泊まり続けている私は十分にその多さを実感している。関西空港にほど近いホテルでは、午後9時になろうとする時刻にもかかわらず、チェックインをする人が列をつくる。

 インバウンドは日本にとってありがたいが、懸念も課題もある。深夜のホテルの廊下で大声がしたが、私には解読不能な言葉であり、喧嘩でもトラブルでも修学旅行生でもないようだ。つまりは日本人ではないということである。

 朝食バイキングのオープン時間に合わせて行ったのだが、すでに十数名のお客がいた。すべて近隣諸国の人であった。1人でそんなに食べられるのかと突っ込みたくなるような食材の取り方。ゆで玉子を1人で3個も食べるならコレステロールの過剰摂取で健康に良くないと言いたいが、2個は上着のポケットに入った。

 また、食事会場には数種類のジュースが用意されているが、テーブルの上には持ち込みのペットボトルのドリンクがあった。飲み終えたペットボトルにそれらの飲み物が充てんされているではないか、その巧妙さに脱帽である。さらには、広い口のビンにキムチの素のようなものが入っており、持ち込んだイリコを付けて食べていて、そんな習慣があるらしく、テーブルを回って勧めていた。

 築地界隈は、外国人が寿司や刺身を求めて混雑している。回転寿司にも多く見かける今日である。長崎県の離島の民宿に来た隣国の人が、その築地よりも、新鮮でおいしい刺身を生魚が無理と言って食べなかった。その地を訪れた目的は誰しも、新鮮な魚介類と思う。さらには、夜中遅くまで部屋に集まり大声で仲間だけで話していたと言う。

 どうやら高騰する都市のホテルを敬遠し、安いと言うだけで来ている節があり、それでは困ることばかりである。空き部屋貸しの民泊で起こっているようなマナー違反がいろいろな宿泊施設で起こるならば、価値観や習慣の違いはある程度受容すべきとは思いつつも、心が広くない私にとっては、それは違うと思うことの連続である。

 観光立国を提唱するわが国は、他国にこびを売り、すべてを合わそうとするなら、旅行の本質や魅力が損なわれることになる。わが国固有の食文化や生活習慣、あるいはモラルやルール、配慮や心遣い、そして「おもてなし」への理解があってこそ、日本の魅力の神髄と言えるのである。

 訪日外国人に諸手を挙げて来てほしいというだけでなく、ルールやモラル、文化、生活習慣の理解の上に日本の魅力を理解できるように、ガイドブックや案内資料の提供、旅行会社などからの顧客への指導など、事前情報をしっかり伝え、理解してもらってこそ観光立国のあるべき姿である。農水省が推進しようとする「農泊」も理念や取り扱いノウハウはそこから始めなければならない。双方向で互いが心地よい国際交流となり、地域振興になることを期待したい。

170304h

 
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