米国への移民難民や7カ国の入国禁止など大統領令の乱発とも思える状況に、世界の多くの国が批判の意思を表明している。また、あらゆる閣僚の選出が進まず、トランプ米大統領の新政権は、混乱が続く中の船出となった。そんな中、安倍首相との会談やもてなしゴルフに多くの時間を割くなど、日米関係が良好に見える映像が流れ、そこに北朝鮮からのミサイル発射に対応する事態となった。
したたかだとされるトランプ商法には、「売り手良し、買い手良し、世間良し」の近江商人の「三方良し」の理念はないかもしれないが、少なくとも日米双方にウイン・ウインの関係が生まれることを望みたい。
前オバマ大統領が昨年5月27日にヒロシマを訪れた様子を世界のメディアがとらえた。その影響は大きく、広島市への訪日外国人は大きく増加している。二番煎じやオバマ踏襲を嫌うトランプ氏には、辺野古の基地問題をめぐって政府と沖縄県が裁判や論争が続く中、オキナワを訪問し、「普天間は返還し、現状の施設で対応可能であり、環境破壊が懸念され、県民の理解が得られない、辺野古など新たな基地は必要としない」と言ってくれたらと思う。さらに、在留沖縄米軍兵士を前に「県民に迷惑になる行為を現に慎むように」と綱紀粛正を指示するなら、人気が上がることになる。ゴルフ中にトランプ氏に提言してほしい。
広島県では、広島商工会議所が事務局を持つ、広島湾ベイエリア・海生都市圏研究協議会が体験型修学旅行の誘客推進に関して、観光庁長官賞を受賞するなどその活動が広く認められるようになった。過日、加盟する7市町の協議会が一堂に会しての交流会が開催された。各地の事例発表、課題の共有やその解決方法、さらには教育効果と質の高い受け入れを目指して意見交換が行われた。パネルディスカッションに続いての交流会には湯﨑英彦広島県知事、松井一實広島市長も駆け付け、200人を超える参加者が熱い議論と交流を繰り広げた。
瀬戸内海の島しょ部や中国山地にある中山間地は、過疎高齢化の波が押し寄せ、交流人口拡大の担い手も減少の一途をたどっている。農山漁村生活体験の民泊(農水省の新政策では「農泊」)の受け入れ家庭は831軒にまで拡大できたが、学校の統合などにより1校当たりの人数が拡大する都市部の学校事情と、受け入れ時期の集中に対応するには、受け入れ家庭の維持、拡大は大命題である。
地域振興は行政の本分であるが、それらの課題解決には役場や市役所の力ではいかんともし難く、官民一体となった住民力が極めて重要であり、それらの意識醸成が今回の交流会の目的でもあった。参加者の多くから元気をもらった。「頑張ります」と言われ、笑顔で会場を後にした。儀礼的でもセレモニー的でもなく、地域振興の理念のもとに集まり、議論し、交流し、共有し、自信と誇りを持って事業に取り組む姿勢を確認した。とても心地よい時を過ごした。地域振興の始まりは人の志からである。