【体験型観光が日本を変える 82】防災意識の向上を 藤澤安良


 西日本豪雨は中四国を中心に土砂崩れ、河川の氾濫や決壊により、家屋の流出や倒壊、あるいは浸水など甚大な被害を及ぼした。日を追うごとに犠牲者は増え続け、死者210人を超える大惨事となった。

 テレビからのニュース映像が流れるたびにその水量の多さに驚かされるばかりである。床下・床上浸水のレベルではなく、2階までも浸水し、屋根の上で助けを待つ人が映し出されるなど、誰もがそんなことになるとは予測せずに暮らしていたに違いない。多くの死者を出す要因ともなった。

 予想外、想定外は聞き飽きた感があるが、防災基準、災害対策、避難勧告、避難指示においても、結果的に甘さがあったことになる。住民側も備えができていなかったことは否めない。また、亡くなった人の多くが60歳以上であるなど、数十年や百年に一度あるか、ないかの災害だったことからも、今まで生きてきて大丈夫だったという過去の経験が災いした。さらには、深夜や夜間の避難指示の徹底の難しさも露呈した。

 勧告、指示の行動を促す度合いや尺度が分かりにくいと災害のたびに議論になる。いっそすべて、火山の噴火レベルや地震の震度を数字で表しているように、避難準備は避難命令1、勧告は同2、指示は同3とした方が分かりやすい。命令には抵抗があるかもしれないが、命を守るという意味の「いのちれい」と考えるべきであろう。

 雨が上がり、快晴で猛暑になって5日目だが、災害の大きかった広島に来ている。断水の広島空港は節水を求めるアナウンスが流れている。広島駅は新幹線の切符を求める人の長蛇の列がコンコースに続く。おもてなしを華美に演出しろとは言わないが、長時間待たせることのない人員を投入しなければならない。それこそ全社を挙げて応援態勢を取るべきであろう。

 消防はいち早く他県から派遣されて活躍している。駅も空港もスタッフが足りていない上に、「お待たせしました」とはいつも通りに儀礼的に言うが、待たせている罪悪感も申し訳なさそうな雰囲気が感じられない。また、非常時や多客期の扱いが、応用や臨機応変がなく下手であり、動きが緩慢である。それは客扱いのスキルが低いと言える。係がやるのではなく、チームや会社全体で取り組む姿勢が必要になる。日本のサービス業のレベルが非常時に露呈する。ITや技術は発展したが、人間力の進化と言うより、退化に向かっているようにも思える。

 全国的に猛暑日が続き、被災地も気温が40度に迫る中、ボランティアの人数が増え、復興に向けて動きが活発になっている。残念なことに、炎天下の慣れない作業なのか、熱中症で病院に搬送される人数はボランティアの人の方が上回るという皮肉な結果となっている。人のために役に立とうとする精神は尊い。健康に留意してのボランティア活動は、防災を意識する上でも重要な体験となり、ある意味それも人間力である。夏休みに被災地に向けてのボランティア活動が旅の企画になってほしい。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒