【体験型観光が日本を変える 79】防災学習で備えを 藤澤安良


 ロシアで開催されているサッカーのワールドカップ初戦で日本が強豪コロンビアに勝って日本中が歓喜の渦に巻き込まれた。試合後、とかくサポーター同士の争い事が絶えない印象がある中、観客席の日本のサポーター自らが応援グッズのはずの青いゴミ袋にゴミを回収し、本当のゴミ袋とした行動が賞賛され、対戦相手国のコロンビアをはじめ他国のサポーターも真似をするなどいい影響を及ぼしている。スポーツはそうあってほしいものである。第2戦のセネガルとは引き分けとなり、決勝トーナメント出場への期待が高まる。明るい話題が日本中に広がってほしいものである。

 18日には、大阪府北部を震源とする大きな地震があった。大阪空港に向けて飛んだ航空機の機内アナウンスで「大阪で大きい地震が起こったため、空港を一時閉鎖して点検をしており、到着が遅れる見込み」とのこと。しばらくして「滑走路には異常が認められなかったので、着陸するが多くの離発着機で混雑している」として、大阪上空を旋回している様子であった。幸い30分程度の遅れで到着したが、空港リムジン、モノレール、阪神高速道路のすべてがストップしており、タクシー待ちには長蛇の列はできているのだが、肝心のタクシーがやってこないのである。

 地震発生が通勤時間帯の朝8時前の出来事ゆえに、交通機関の運転手も、鉄道や高速道路を点検する人も出勤できないようである。完全に都市機能がまひする真っ只中にいた。交通機関やインフラなどには大きな被害はなかったようで、数時間後から復旧し始めた。大阪空港から町の中心まで出るのに5時間ぐらいかかった。新大阪駅から大阪駅付近まで2時間近くかかって歩いた人もいた。後のニュースでは、歩く人で淀川の橋が渋滞していた。そんな中、訪問先では相手をしてくれる人がいた。日本人は仕事に対してなんて律儀なのだろうと感心せずにはいられない。

 この地震で5人の死者が出て、耐震や違法建築物などの課題が残った。いつも似たようなことが起こる。交通事故死者が出てから歩道橋ができたり、信号ができたりする。ストーカー殺人が起きてから警察が動く。自殺者が出てからいじめの調査を始める。今回も、犠牲者が出てからブロック塀の調査が始まった。過去や教訓を生かせず、学ばずであってはならない。

 阪神淡路、東日本、熊本など大震災が相次いで起こった。地震国の日本では他人事にしてはいけない。首都直下型や東南海や南海トラフなどの地震の想定に対して防災学習は命を守るという重要な体験プログラムである。和歌山県南紀州交流公社や、日本初の津波シェルターを室戸市に設置した高知県東部広域や、津波の想定が高く、集落ごとに防災タワーがそびえる四万十川流域の高知県幡多広域の黒潮町でも防災学習のプログラムを行っている。行政はもちろん学校教育で取り入れなければならない重要な課題である。人災は起こさない努力、天災は生きる備えと行動にある。

 
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