【体験型観光が日本を変える 70】理念と志と責任を 藤澤安良


 熊本震災からはや2年が経過した。いまだ3万8千人余りが避難生活を余儀なくされている。東北と合わせて1日も早い復興が望まれる。

 そんな中にあって、政府では高級官僚の謝罪が相次いでいる。法務省は受刑者が脱走し捕まらず、警察庁は未成年警官が銃で教育係の警官を射殺するという事件が起こり、防衛庁ではなかったはずの自衛隊の日報が大量に相次いで発見された。渦中の財務省では、資料の改ざんが行われ、森友、加計学園問題に揺れている最中、次官のセクハラ疑惑までも起こっている。この国は大丈夫かと思うことばかりである。

 自然界は桜に続いて例年より早く木々の芽吹きが始まり、さわやかな季節を迎えた。タケノコもご多分に漏れず例年より早く、私はまさに旬の味を堪能した。田舎では山菜もおいしい季節となった。地方への旅の醍醐味である。

 しかしながら、都会では世界中から食材がやって来て季節感が分かりにくくなっている。ホテルに宿泊することが多いというより、ほとんどホテルを渡り歩いているが、都会だけでなく、田舎の公共の宿や旅館でも、その食事が今朝も、昨日も、「全国総金太郎飴料理」であり、輸入食材や出来合いの惣菜ばかりである。旅の楽しみが消滅している。

 一人暮らしの若者や一般家庭でも、冷凍食品、カップ麺、コンビニ弁当、スーパーの惣菜などで済ませ、料理をしない人が増え続けている。訪日外国人はそれらが日本の文化であり、世界無形文化遺産に登録された和食であると勘違いしなければいいのだがと思わずにはいられない。

 体験型観光を推進しているが、地方には素晴らしい食材を生産し収穫する現場がある。豊かな自然があり、魚釣りも、アニマル・ウオッチングも、アウトドア・アクティビティもある。すべての地域に潤沢に宿泊施設があるはずもなく、在宅型民家ステイを拡大しているが、そこでは、地産地消の田舎料理に限定し、共同調理としている。今なら田舎には料理ができる年配の人が多く、その人たちから教えてもらうことにより、次の時代へと継承されていく。

 地方や田舎の魅力と可能性は無限大である。地方を照らす光明である体験型観光振興に今こそ力を注がなければならない。地方創生や農泊推進など政府も財源を用意し推進しようとしている。それはありがたいのだが、事業のための事業であったり、書類提出のための事業であったり、業者だけが儲かる事業であったりする。そして結果には責任を負わない。結果を出せる仕組み作りは、人づくりであり、住民の意識醸成でもある。必ずや結果につなげなければならない。

 日本を変え、未来を拓くには、保身、面子、立場、利権を求めず、崇高な理念と高い志と責任を持って推進する人材とコーディネート組織が不可欠である。さすれば、必ず結果が着いてくる。そうして、いくつもの地域が成功への道をたどり始めている。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒