【体験型観光が日本を変える 68】農山漁村体験は世界のニーズ 藤澤安良


 3月の彼岸が過ぎて暖かい日が続き、1週間以上桜の開花が早まったところも少なくない。地域で例年予定されている桜祭りも、主催者泣かせの陽気に葉桜祭りになりかねないと気をもんでいる。自然は人間の都合通りにならないから、タイミングが合ったら感激もひとしおである。

 日本の桜を見たいと、世界中から多くの外国人が3月末から4月上旬にかけて日本を訪れている。桜の開花情報に過敏に反応することになる。とりわけ、桜が咲かない亜熱帯から熱帯地域にある東南アジア諸国では桜の人気が高い。その航空座席が取りにくくなっている時期に常夏の国スリランカへ旅した。

 スリランカは、30年にわたって内線が続いていたが、2009年に終結宣言が出された後、治安の安定とともに経済発展も進み、多くの観光客が訪れるようになっている。世界遺産も多く、なかでもジャングルにそびえる岩山が要塞のような王宮であった「シギリヤロック」、2200年以上の歴史を持ち、荘厳な壁画と仏像群で知られるスリランカ最大の「ダンブッラ石窟寺院」、さらには、古都キャンディの街並み。紀元前543年にインドで火葬されたブッダの歯が納められている「仏歯寺」は、仏教徒が憧れる一大聖地だけに参拝者が後を絶たない。

 スリランカは、ブッダの仏教の歴史から始まり、ポルトガル、オランダ、イギリスの統治時代を経て、第2次世界大戦後セイロンとして独立、その後の内戦。激動の歴史の国だけあって、それらを解説するガイドは高い知識が要求される。そんなニーズに対応すべく国家ライセンスを取得した日本語通訳ガイドに出会った。課題は山積していたが、なんとか合格点というところであった。

 今年1月4日、日本では改正通訳案内士法が施行され、これまで必要だった国家資格がなくても、有料で訪日外国人旅行者向けの通訳ガイドができるようになったが、知ったかぶりの知識のひけらかしではなく、知識力と語学力はもちろん、情報伝達能力、旅程管理力とコミュニケーション能力が問われている。旅の楽しさもガイド次第であるが、当のガイドはそれほど責任感を自覚していないのが課題である。

 さらに日本では訪日外国人の急激な伸びに対応すべく、民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行が迫る。客のことを考えないオーナーや、社会のことを考えない自己中心的なお客により、トラブルが多発し、ルールが骨抜きにならないことを期待したい。

 スリランカの道路脇には、「ROOMS」「HOMESTAY」などという看板が目立っている。日本より早くから民泊が動き出している。ホームステイの日帰り(デイステイ)版で(1)牛車で移動(2)手漕ぎ船で湖を移動(3)田舎の農家で郷土料理クッキングなどの生活体験(4)スリーウィラー(自動三輪車)で送迎―という4時間コース「ビレッジ・サファリ」も人気が出てきているという。農山漁村の暮らし体験は、世界の時代のニーズである。

 
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