【体験型観光が日本を変える 57】地方を応援する観光を 藤澤安良

  • 2018年1月14日

 新しい年を迎えるたびに、地方がなんとか明るい未来につながる年になればと思っている。しかし、手強い課題が山積している。

 田舎をゆっくり走る1両のローカル線に乗った。線路は時折、集落の中を走っている。乗り降りするお年寄り以外は、歩いている人の姿が見えない。みんな車なのだろう。東京では駅も大きく、電車の乗り換えでもよく歩く。地方から来た人は、朝のラッシュ時にぶつからずに人を避けて歩く速さとその様子に驚いている。訪日外国人も同じように思っているらしい。JRのホームで「次の列車は短い10両編成で到着します」とのアナウンスに「10両がなぜ短いのか、うちらのは1両だよ」という。東京のJRは15両あるからなのだが。私が「電車が行ってしまった。3分も待つのか」とつぶやくと、「うちらの方は1時間に1本しか走っていないから、3分は待っているうちに入らない」という。それもそのはず、その線からJRの特急に乗り換えるのに待ち時間は39分もある。駅には小さな売店が一つだけ、日曜日なのに駅前の食堂は本日休業の看板。時間をもてあますことになる。田舎だからで済ませてはいけない。もっと何か工夫がありそうなものだ。

 そのローカル線は田園地帯を縫って走る。その車窓からは、耕作放棄地やその年月が経過した荒廃地が目に付く。さらには間伐ができていない杉やヒノキの人工林が広がっている。日本の標準的な耕作面積での稲作では生計が難しい。刈り取り後の田んぼや、何種類もの野菜が栽培されている畑を見ると、大根が収穫期を迎えている。1年中食べられるが本来は秋から冬が旬である。スーパには土の付いていない真っ直ぐな大根が並ぶ。畑には曲がったり、二股三股になったものも収穫されている。その背景や現場の真実を知らない人も多い。

 先祖が開拓し守ってきた田畑を後世につなげたいと思う気持ちがあると思う。しかし、後を継いでくれるはずの子や孫が町や都市に出て行ってしまう。いかんともしがたい現実がある。それでも、国土保全と食料自給率38%の1次産業を支えている。みんな頑張って生きていると思う。何気ない農山村の風景だけど、農林業の危うい現状が見て取れる。

 田舎の情報はテレビやネットで得られるが、現実感は薄い。意識も現実も大きな差異がある。その差異と現実感がないことこそ、現地を訪れる魅力と目的になる。本当においしいものや新鮮なものは現場にある。そんな田舎の真実と価値を理解してもらうには、来て見て、労働し体験し交流し、食べてもらうしかない。旅人にこびを売らず、着飾らず、背伸びせず、ありのままの暮らしや生き様がドラマになる。真実を知る旅、大変な旅、そんな旅こそ、わが国に必要な旅である。さらには、ふるさと納税は地方を応援するはずのものだが、物欲的な返礼品合戦になっている。労力や観光で地方を応援する社会貢献が旅となるような時代を築きたいものである。

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