【体験型観光が日本を変える 53】壮大な遊びと学び 藤澤安良


 卓球、バドミントン、トランポリン、フェンシング、水泳、野球、体操、柔道、スピードスケートなど、スポーツでの若者の活躍が目立っている。来年に開催が迫った平昌冬季オリンピックや、開催まで残り千日を切った東京オリンピックなどを含めて日本選手の活躍が期待できる。

 歴史と伝統が重んじられている大相撲の世界で暴力問題が取り沙汰されている。国技と言われる伝統的なスポーツでの不祥事は、盛り上がるスポーツ界に水を差す結果となった。何度も暴力問題があった相撲界だけに、その教訓が生きていないことが残念である。

 現代社会にそぐわない悪い伝統を引きずることになってはならない。全国各地の学校に土俵が残っていたり、土俵の跡だとされる場所が見られたりするが、その多くがもう使われていないという。外国人力士が増える中にあって、日本の若者の相撲離れに拍車がかからないことを願うばかりである。

 働き方改革が求められている中で、パワハラ、セクハラ、暴言などの撲滅が課題でもあり、どの職業においても職場環境の正常化は必須条件である。

 低所得と将来不安が相まって若者の消費が伸びていない。製造業の平均所得は493万円で、サービス業のそれは234万円と半額以下である。今年1月からの訪日外国人旅行者数が11月4日で昨年の年間値2404万人に達し、今年は年間で2800万人になると予測されている。外貨獲得は有り難いことだが、観光従事者の待遇改善も目指さなければならない。

 さらには、インバウンドの地方への波及はまだまだ不十分であることから、自然豊かな田舎の魅力を生かした都会にない観光資源の活用で、誘客拡大を目指さなければならない。短時間の風景観光では経済効果が薄い。体験交流型の観光資源が生きてくる。豊かな自然も、アウトドアアクティビティも、伝統工芸も、味覚体験も、すべてはガイドやインストラクターが必要であり、その養成が不可欠である。そして、再販、継続が可能な報酬が払われる必要がある。

 しかし、多くの地域で体験料の安さと体験時間の短さが課題となり、拡大、継続を困難にしている。安ければ人が来るわけではない。短時間で終われば次の目的地に行ってしまい、宿泊、飲食、物産への波及につながらない。中身が肝心であり、感動し心高まるプログラムにする必要がある。インストラクターと内容が伴っていれば、体験料は健全な収支になるような価格に設定すべきである。安値競争から脱し、中身競争にしないと観光が地域振興とはならない。

 台風明けで増水していても青くきれいな四万十川でカヌーをした。晩秋の中国山地でのトレッキングでは、葉を落とし冬支度が始まったブナ林の枝や幹が夕陽に映えて輝いていた。大人の男が集まって森林間伐体験の研修も行ったが、みんな面白かったと言う。人と自然と生業と歴史文化を素材にした、壮大な遊びと学びが体験型観光である。

 
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