【体験型観光が日本を変える 166】緊急事態宣言解除でどう変わる 体験教育企画社長 藤澤安良


 政府は5月14日、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言について、8都道府県を除いて、感染者の増加が少ない39県で解除した。外出自粛や休業要請を徐々に緩和しないと生活が維持できない状態になりつつある。世界でも同様に、社会経済活動再開へかじを切るところが増えている。

 国内の倒産件数も増え続け、中でも宿泊業の倒産が一番多い。観光産業の価格競争や、設備投資の返済など内部留保が少なくぜい弱な財力が露呈されたことになる。

 休業補償、持続化給付金、雇用調整助成金などが少額で、スピード感もなく、うまく機能していないのか、観光立国やインバウンド誘致拡大と期待して頑張った人も、残念ながら救えなかったことになる。

 国内は感染者数の減少が見られるものの、世界中では感染者数470万人、死者数31万人を超え、今なお増え続けているのが現状だ。感染爆発や拡大の第2波、第3波が起こりはしないかとの懸念は少なくない。

 何回か述べているが、都心の夕方のスーパーは混んでいる。家賃の高い都市の居酒屋やレストランの席間距離は限度がある。その状態に比べて、施設側の3密回避や感染防止対策と客側も予防対策を徹底し、人数の限定も視野に入れ受け入れをすれば宿泊業の方がはるかにリスクは少ないと考えられる。徐々に経済を回していかなければ観光産業は破綻増大の一途をたどることになる。

 人件費と設備費などのランニングコストを稼ぎ出すことが収束後への準備でもある。国民の多くが懐事情がよくない時期である。マスク価格のようにもうけに走ることなくコロナ割引キャンペーンをし、社会貢献価格で対応すべきである。

 まずは少人数単位のマイカーでの家族客が行ける企画ならマーケットは動き出せるはずである。

 1970年代、当時の国鉄観光キャンペーン「ディスカバージャパン」は日本の美しい自然景観と歴史文化を再発見するというものであったが、すぐさまインバウンドの復活が見込めない今、伝統の匠の技や、長い歴史に育まれてきた祭りなどの伝統行事や芸能、地方の味覚など、日本人による、日本の良さの再確認をし、次代に残すための意識醸成と課題解決行動へとつなげる時である。

 ステイホームでの毎日三度の家庭内料理は大変である。旅こそ、その土地の食材による郷土料理を期待したいが、業務用冷凍食品等出来合い料理があまりにも多く、観光産業が地域との一体感が乏しく進化しない原因の一つでもある。それらをリセットして地産地消にかじを切るべき時であろう。

 テレワーク、リモート、ウェブを駆使したテレビ番組もぎこちないし、リモート飲み会も1人飲みよりはいいが、触れ合いがなく空気感も伝わらない。平時なら東京、大阪間の出張は増え続けている。やっぱり生の人間同士の交流コミュニケーションに勝るものはない。

 コロナ収束後は、人間にとって、体験・交流・コミュニケーションは、今以上に貴重な時間となるはずである。時間がある今、その準備を進める時である。

 
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