【体験型観光が日本を変える 142】即位の礼、天皇陛下のお言葉に思う 体験教育企画社長 藤澤安良


 10月22日、徳仁天皇の「即位礼正殿の儀」が行われた。即位式には183の国・地域と機関から、内外賓客1999人が出席し、平安絵巻さながらの厳粛な面持ちの中で繰り広げられた。

 当日はあいにくの雨が続いていたが、即位式が始まると雨が止み、とても美しい虹が都心にかかった。

 翌23日朝、羽田からの大阪便に乗ったが、快晴の上空からはとても美しい初冠雪の富士山を確認した。神がかり的な気候の1日であった。神話に登場する三種の神器のうち、御料車や松の間に持ち運ばれていた剣が、雲を掌握する霊力により雨をもたらしたためとの見方をする人も現れた。

 即位後朝見の儀で、天皇は結びに「国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します」と述べられた。誰しもそうあってほしいものである。

 一方、先の台風15号や19号は死者や行方不明者、家屋の倒壊や浸水など甚大な被害を出した。しかしその後、千葉県や福島県でそれより多い、半日で1カ月分の雨が降った。浸水被害が続き過ぎている。また、各地で冠水した田んぼやビニールハウスの野菜、落下した果実など農業被害も36都道府県で1千億円以上に上るとみられている。

 復旧・復興には決壊した堤防や土砂崩れは大型重機の出番であるが、家屋や田んぼの片付けや整備の多くは人の手によらなければならない。平時でも人手が足りない中での現場の負担は大きい。そんな中、ボランティアが活躍している。

 ボランティア側と受け入れ側窓口と現場の状況把握とニーズをマッチングさせるのは、かなりの配慮と技量が必要になる。社会貢献やボランティア活動をしたいという人も少なくない。旅行業界も積極的にこの分野に取り組むべきである。 美しい風景、郷土料理、温泉など、ぜいたくとはほど遠い生活環境と重労働である。つまりは、上げ膳据え膳、至れり尽くせりなど高いサービスを要求されるような、元来の旅の志向や顧客層ではない分野でもある。その分野の顧客開拓と意識改革をすることが求められている。

 しかし、学びも感動も多いはずである。防災意識が希薄なわが国で起こり続けている自然災害に対する現場と被災者の話から、防災意識を深める機会となる。また、市場では農作物が品薄になり、価格高騰という現象の原理は理解できるだろうが、食料生産現場の労苦や経営事情や物流システムまでには至らなかったものが理解できる。

 大人の有志や組織や企業のみならず、学校教育現場でも修学旅行などを利用し、テーマパークや遊園地では学べない、被災地訪問、社会貢献活動、ボランティア活動などを行うべきである。

 スマートフォンやパソコンでバーチャルなゲームに没頭しても人間性は到底養えない。天皇はお言葉で、「常に国民を思い、国民に寄り添いながら」と述べられ胸にしみた。国民も志を高く持ち、己のためならず、社会のために行動したいものである。

 
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