老後の生活に年金で足りない分が2千万円も必要とする数値が日本中を駆け巡り、先行き不安をあおった形となった。そんな中で、せめて保険をと思い、かけていた保険会社に裏切られたような嘆かわしい結果となった。
郵便局という絶大な信用の上にある「かんぽ生命」が、二重契約や無保険状態を作るなど、お客が不利益を被るという不祥事が、分かっているだけで9万件にも及んでいる。ビジネスの常道であるお客中心とは程遠い組織的都合で、社員に厳しいノルマを与えるなども大きく影響しているという。お客が入りたくなる保険商品作りをすべきである。保険とはお客を守るためのものであり、正義をゆがめてまで守ろうとしたのはお客ではなく、組織であり自分たちであった。
一方で、日本のエンターテインメント界を築いたジャニー喜多川氏が87歳の天寿を全うした。育ての親であり、人生の恩人である同氏に対して、150人ものタレントたちは口をそろえて愛情と尊敬と感謝の念を表している。組織のありようとして、大きな違いがある。
4月の米国フォーブスの調査によると、企業の価値を示す時価総額の上位企業の10位までを米国のアップルやマイクロソフトなど8社が占め、残りの2社は7位のアリババグループなどの中国であり、日本のトップは46位のトヨタ自動車というから、驚きであり、残念でもある。
日本はICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の分野で人材面で大きく立ち遅れており、今後の大きな政策課題でもある。企業内部で偽装や不正をやっている場合ではない。
また、参院選を前に党首や候補者からはいい話ばかりが述べられるが、そんなことができているなら、もっといい国になっているはずである。
未来の日本を背負ってくれるはずの学生の教育環境に課題も多い。約30の大学などの学生で作る「FREE」が昨年9月から今年6月にかけてインターネットなどで実施した調査でも、最近の大学生の苦しい実態が見えてくる。集計が終わった6226人の回答のうち、46.1%が生活費を稼ぐアルバイトのために「睡眠時間が削られる」と回答した。
なかには「1日の食費が300円」「毎日2時間睡眠でアルバイトと学習をかけもちしていた」といった回答もあったという。
奨学金受給は全学生の51.3%にも及び、返済困難者は約3万人で、そのうち返済ができずに1万5千人が自己破産しているという。少子化でどんどん子どもが減り続ける時代に、学生生活が心配なくできるよう、大学までの教育費の無償化を進めなければ世界に取り残されてしまうであろう。
政治も企業のあり方も全ては人材から始まる。おろそかにしてはならないもの、忘れてはならないのが、ハングリー精神で、艱難(かんなん)辛苦を乗り越える根性や、人とうまく関わることができる学業以外の人間力教育である。引きこもらない、いじめのない人間力形成の上に学力がある。その人間力は人と人のコミュニケーションであり、体験教育により形成される。