【体験型観光が日本を変える 114】五島市でほんもの体験フォーラム 体験教育企画社長 藤澤安良


 平成最後のという言葉がついて回る。今までは年号が替わる事態は突然やって来るのが普通だったが、今回は余裕があり、天皇はご健勝でおられることからも、めでたいことである。野球界でもイチロー選手が28年にもわたる現役選手を引退すると発表した。打撃は言うに及ばす、守備走塁においても超一流であり、平成の間にあらゆる記録を打ち立てている。引退は残念であり、寂しい限りだ。

 人間は年月や経過には逆らえない。何人であっても1年に1歳年を取るが、日本の地方は若者の流失が激しい故に、高齢化率は大きく上がっていく。同時に学校の廃校も相次ぐ、今年も3校廃校になった長崎県の国境離島の五島市がある。

 過疎、高齢化の波を乗り越えて地域の活性化を図るには交流人口の拡大以外にないとして、体験型観光を推進し、特に在宅型の民泊を整備、教育旅行の本格的誘致に力を入れた結果、年間8千泊にもなろうとしている。

 さらには、昨年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録され、誘客の追い風となっている。その五島市で3月21日から「第15回全国ほんもの体験フォーラムin長崎・五島」が開催された。

 あいにく当日は全国的に春一番の風が吹き、当地も船の関係で途中参加になるなどの人もいたが、長崎から海上100キロも離れた地域に700人もの参加があった。体験型観光への追い風も吹いていることを実感することとなる。

 事例発表では、高校時代に修学旅行でまつうら党の民泊に泊まり漁業体験をした、大阪の進学校に通う生徒が大学に行かずに、長崎県平戸市に移住し、お世話になった漁師に弟子入りして漁師として活躍している話を聞いた。本人とお母さんの2人の体験談は多くの人の心打つ話であった。

 私の基調提案のあと、公開パネルディスカッションでは「心高まる旅」をテーマに、7人の体験型観光コーディネート組織の実務者や行政担当者、あるいは体験プログラムのインストラクターや民泊の受け入れ家庭などから、本音の体験談を聞くこととなり、やってもいない評論家や有識者という人々とは全く説得力が違うことからも、全国各地から公務や出張経費ではなく自費負担があっての参加でありながら参加者が多いゆえんでもある。

 夜の情報交換会にもほぼ同数の参加があり、盛り上がった。翌日の課題別の分科会では(1)農山漁村生活体験民泊の推進(2)体験交流型観光マーケットの拡大手法(3)コーディネート組織と自治体連携の在り方(4)感動と深い学びを与えるガイドインストラクターをめざして―など、4分科会でも体験談を語るコーディネーターとパネラー総勢29人で熱い議論が繰り広げられた。

 体験ツアーの参加者も多く、五島の魅力を感じてくれたに違いない。来年度の第16回は同時期の3月21日から長野県飯田市を中心に南信州広域で開催が決まっている。いろいろな波と風が吹いたが、次回再会を約束し、島を後にした。

 
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