【体験型観光が日本を変える 108】寒波に思う、真冬の醍醐味 体験教育企画社長 藤澤安良


 寒波が日本列島を襲い、北日本と日本海側に大雪をもたらした。羽田空港を飛び立った航空機の窓から東京、広くは関東平野まで白いベールに覆われていた。その前日までの3日間は毎年実施されているガイドインストラクター研修を行うために、道東の標津町に向かった。

 春節の時期でもあり、札幌では雪祭りの最中であり、観光客は札幌に集中。道東は少ないのではと思ったが、A321の新型機で小型機ではあるがほぼ満席であった。この路線ではまれにしか見なかった外国人も1~2割も乗っていた。激寒の地でいったい何が行われているのか、どんな魅力に人が動くのか興味が湧くはずである。

 そこは水平線ならず、結氷した野付半島の汽水湖である尾岱沼を歩く氷平線ウオークなるものに数千人が来ている。障害物が全くない氷上でインスタ映えし、珍百景的な映像を撮ることも人気の要素である。現代的な現象と言える。

 冬の野鳥のオジロワシやオオワシも見られることもあり、さらには、やがて流氷もやって来るとあってはボルテージも高まる。そのフィールドからは、話題の北方領土の一つである国後島まで16キロと最短距離にあり、間近に望める。また、標津湿原でのスノーシュートレッキングも冬の標津を満喫するプログラムである。それら多くの魅力的な素材が重なって旬のコンテンツとなっている。その激寒の地を安全に案内するガイドの役割も、当地の気象条件をよく知る地元民が解説することに意義がある。

 加えて、旅の大きな目的になりつつある「食」も全国的にも他に類を見ない顧客満足度がある。その土地で取れた魚介類は旨味が濃厚であり、言葉では言い表せないものである。現地に行って食べてみるしか理解できないはずであり、旅とはそういうものでなくてはならない。その、尾岱沼の氷の下にすむ氷下魚(こまい)と北海シマエビと大きな4年貝のホタテの貝柱の刺し身は特別美味である。

 さらに、標津の前浜で取れたカジカの汁、カレイやホッキ貝の刺し身、定番の秋鮭(シロザケ)とそのイクラは日本最高級品とあって当地でも品薄から高めであるが、これを食べずにサケを語ることなかれといえる。まだその上は、初夏に取れるトキシラズと、ロシアアムール川に遡上(そじょう)する予定のサケが2年早く定置網にかかり10万匹に1匹の割合でまぎれ込んでくるという鮭児(ケイジ)は脂の乗りがよく、味の違いが鮮明に分かる。容易に手に入る代物ではないが予約時にリクエストしてみると食べられるかもしれない。

 とにかく、おいしいものは枚挙にいとまがない。それらを賞味するには昼食ではない。源泉掛け流しの温泉もある標津町に2泊し、その土地の旬の味覚を堪能すべきである。著名観光地ではなく、巨大温泉地でもない故に、行ったことも泊まったこともなく、食べたことも体験したこともない人が多いはずである。全国的にそんなところに魅力はあるはずだ。旅の醍醐味は「未知との遭遇」でもある。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒