【体験型観光が日本を変える 106】日本的システムの劣化 体験教育企画社長 藤澤安良


 厚生労働省の毎月勤労統計に不正があったとするニュースが大きく取り上げられている。それもそのはずで、その影響は2015万人に及び、795億円の過少支払いとなる。あらゆる労働統計や経済成長などと密接につながっており、国際的にも日本の信用を失墜することになる。原因やその背景も分からないまま、いち早い処分は非常識のそしりを免れない。

 他の範を示すべき政府の役人の行状がこのレベルでは、大手企業の相次いだ検査偽装や不備があろうことは無理からぬこと、と変に納得してもいけないのである。

 日本の役人や会社員はどうしたのだろうか。戦争で焦土と化した戦後からの目覚ましい復興と高度経済成長の中で何を学び、何をなくしたのだろうか。先人が築いたシステムや敷かれた会社のレールに乗っかって、偉い人になったと勘違いする人も多い。本当に偉いのは、先駆者や開拓者、開発者や発明者であろう。

 記憶力が良くて、物知りでクイズに強いだけでは良い人でも人間的でもない今、わが国に必要な人材は、私利私欲、利権と保身、面子や立場、省益や忖度(そんたく)といったものではなく、真っ当に働くことであり、もちろん、個人の生きるための糧ではあるが、その結果として世界平和や社会に貢献する姿である。

 そんな中、日本の労働力が54.8万人も不足しているとして、外国人労働者30万人を受け入れる動きがある。もうすでに、コンビニ、ファストフード、居酒屋で働いている外国人を見ない日はない。

 一方で、完全失業者数は157万人もあり、引きこもりは54万人と、人はいるのだが、人間関係がうまく作れない、また、ブロガーやネットビジネスなど容易に利益を上げたいとする風潮がある。

 労働が過酷で大変で面倒だなどとマッチングしないという現実がある。楽して収入を得るのはそれはそれで容易なことではない。企業が求めている労働者はコミュニケーション能力であり、人間力である。学業一辺倒では社会でなじめないことになる。

 中学生から大学生は儀礼的、行事消化的なキャリア教育ではなく、コミュニケーション、安全対策、危機管理、コンプライアンスはもちろん、労働の大変さも経営の厳しさも学ぶべきである。

 さらには、国の官僚も地方自治体で副知事、副市長、部長、課長など要職で出向しているが、国との対応はうまくできるのであろう。

 しかし、肝心の職員や地域住民との関わりはできていない。地方自治体の改善も改革も含めて、役職なしで平場に降りて住民目線で行動すべきである。企業人も都市のオフィスではなく、地方の農林漁業などの他業種へのキャリア教育が必要になる。

 外国人を地方への課題もあるが、日本人もキャリア教育で地方を目指すべきである。地方創生の新たな仕組みになるはずである。不祥事やトラブルを学んで次に生かすことこそ日本の行くべき道である。

 
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