バス運転手が不足している要因の一つは高齢化で、平均年齢は50歳に迫る勢いです。全国の大型二種免許所持者約92万人の内訳は、20代と30代で8%、40代と50代で32%、60代以上が60%を占めます。就業人口に置き換えて考えてみると、60代以下は約37万人しかいないということになり、その中の約12万5千人が現役のバス運転手です。バス業界では40代前半の方は「若手」になります。「あと20年乗れるね!」という感覚です。営業所内の最年少が40代の方というのも珍しくありません。20代の若者が入社するとお父さん世代の方が同僚になることもありますので、バス事業者の皆さまには、若者を採用する際は2人以上を同時に採用し、同じ営業所に配属することをお勧めしています。
近頃、国内大手自動車メーカーがアニメキャラクターを用い、車種ではなく「運転免許を取ろう!」というテレビCMを流していたことからも分かるように、近年、普通免許を取得する若者が減少傾向にあります。また、免許を取得しても(車移動が必須の地域を除き)日常的に運転する人も減っている他、MT免許よりもAT免許の取得率が高いのが特徴です。
また、少子高齢化社会で若者の人数が減っており、大卒も高卒も売り手市場、多くの学生は大手など希望の会社への就職を決めています。また、子どもの憧れの職業も最近では、ユーチューバーやサッカー選手、公務員などに押され、バス運転手や電車の運転士など、乗り物の運転職はランク外に留まっています。
大学のキャリアセンターや学生に話を聞くと、「『業界』は、金融、IT、広告、旅行などを考えても運輸業は思いつかない。『職種』は、営業、企画、経理、SEなどを考えてもバス運転手は思いつかない」というのです。選択のステージにも上がってこない、これが現状です。当社は、全国の大学、約150校に「バス運転手になろう!」というポスターを貼らせていただいております。車の運転が好きな学生の目に留まり、「なるほど、バス運転手という選択肢もあるな!」と気付いてもらえればという切なる思いです。若年層への啓蒙(けいもう)活動、成果の見えない地道な活動ではありますが、「今、ここから始めなければならない」。そういう状況にあります。
(リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)