【令和時代における交通インフラの人材採用30】100年に1度の危機 女性バス運転手協会代表理事 中嶋美恵


 歴史は100年ごとに繰り返されている。1720年、ペスト。1820年、コレラ。1920年、スペイン風邪。そして、2020年、新型コロナウイルス。この情報を最初に見た時は身震いがしました。今回の新型コロナウイルスは人類の運命にそもそも組み込まれていたものだったかのように感じます。

 また、2011年に封切られた、スティーブン・ソダーバーグ監督、マット・デイモン主演のアメリカの映画「コンテイジョン」は、まるでこの今の事態を予言しているかのような内容で、高い確率で死をもたらす感染症の脅威とパニックが描かれています。ソダーバーグ監督が「100年に一度の感染症流行」を知っていたかどうかは分かりませんが、とても偶然とは思えないものです。

 9月からこちらの連載をお引き受けして今回が30回目となります。当初の予定では、バス業界のこと、人材採用のこと、特にバス運転手の採用事情について書かせていただきたいと考えておりました。また、国内や海外のバスを取材する機会もあるはずでしたので、珍しいバスなどもご紹介できればと思っておりました。が、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、経済や人々の生命や生活を大きく変えてしまおうとしているこの状況下、当初とは方向性を変えざるを得ない局面であると考えています。

 変わらず採用を続行している、逆にあふれている求職者を採用するチャンスと捉えている企業もあります。しかし、採用などとんでもなく、既存の社員をどう雇用、維持するか苦しんでいる企業も日に日に増加しています。「600名をいったん、全員解雇。収束の際は再雇用を約束して」というようなつらいニュースも飛び込んできています。そのような今、採用とはこうですよ、というような投稿ははばかられるのが正直な心情です。

 当初は、もっと短期間に、またこのような大惨事になることもなく、ことは収束するものとどこか高をくくっていたように思います。しかし、さまざまな意見や発表があるものの、緊急事態宣言も出され、この状況は中長期決戦になることは間違いありません。全ての産業、全ての人々に影響が及んでいます。観光業界、運輸業界は最も影響を受けている産業です。いつ収束するのか見通しが立たないことが何より懸念されます。

 (リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)

 
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