【交通トレンド分析55】ビジネス中心に回復傾向の国内線 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 6月に入り、飛行機を使った旅行需要の回復傾向は見られていないが、これまで不要不急の出張や単身赴任先と自宅との移動などを控えていた人の姿が羽田空港でも多く見られるようになった。

 私は6月1日に羽田空港で人の流れについて取材を行い、さらに6月4日には機内で取材できることになり朝9時半ごろの便で羽田空港から福岡空港へ向かった。ビジネス需要が国内線で回復傾向にあることをある程度は把握していたが、実際に搭乗してみると270席仕様のボーイング767型機に207名が搭乗していた。航空会社の人に話を聞いてみても、直前予約が顕著に伸びており、1週間前に空席が多かった便でも直前に満席になる便も出ていると話す。

 5月においては、ANAが約85%の便、JALも約7割の便が欠航し、運航する便であっても機体を小型化する場合も多かった。6月に入ってからはANA、JALともに約3割の運航率になったが、それでも約7割の便が欠航していることもあり、限られた運航便に予約が集まっている傾向にある。そのため、ANA、JALともに臨時便を設定したり機体を大型化するなどの対応をしている。

 ANAでは全座席の販売を行っているのに対し、JALではソーシャルディスタンス対策として、中央席の販売を行っていないことから、販売座席数が制限されている。そのためビジネス路線を中心にANA以上に満席便が目立っている。

 IATA(国際航空運送協会)では、飛行機機内における感染リスクが低く、乗客から乗客への新型コロナウイルスの感染が疑われる事例はないという非公式調査の結果を発表しており、隣席を空席にする必要はないという見解を出しているが、乗客に少しでも安全に乗ってもらいたいという考えから、JALやFDA(フジドリームエアラインズ)などで隣席を空席にする対応をしている。ただJALでは6月末で中央席の販売をしない対応を終了することを発表している。

 8割弱の搭乗率になっている便に搭乗し、隣にも他の人が座っていたが、特段不安になることもなく福岡空港に到着した。事前に、機内が常に空気が循環され、3分に1回のペースで全ての空気が入れ替わり、さらに「HEPAフィルター」と呼ばれる病院の手術室でも使われている高性能フィルターの実物も見せてもらうなど清潔な空気を機内に送り込んでいることを取材する機会もあったが、機内は「密」に思われがちであるが、実際は全く「密」ではなく、航空会社側も安心して飛行機を利用してほしいと話している。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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