パリオリンピックが閉幕し、日本は金メダル20個を含む45個のメダルを獲得するなど盛り上がったオリンピックになった。私も8月3日から9日までパリを訪れたが、パリ市内を移動するのに便利なのが「メトロ(地下鉄)」。特に五輪期間中は中心部のコンコルド広場でも競技が行われ、聖火台も設置されるなど大規模な交通規制が敷かれたこともあり、確実にメトロでの移動が便利だったが、パリのメトロではオリンピック・パラリンピック期間中を中心に期間限定で値上げをしている。前回の2021年夏に開催された東京五輪では、公共交通機関の値上げは元々実施される予定はなかったが、首都高速の通行料金のみ、五輪関係車両をスムーズに走行させることを目的に日中の時間帯を値上げしたケースはあったが、メトロを期間限定で値上げするのは珍しいことであった。
具体的には通常は2.15ユーロ(約348円)のところ、7月20日から9月8日までの期間限定で4ユーロ(約648円)に値上げされている。各報道によると、値上げの理由は五輪観戦も含めて観光客が増加することに伴う追加費用が発生するとの理由だが、実際は観光客自体が増加しておらず、ホテル代が高騰したこともあり、普段の夏と変わらないか、人によっては少ないのではないかという声も聞かれたほどだった。ただ、パリ市内のほとんどの競技会場がメトロで行くことができ、最寄り駅には多くの人を配置していたほか、臨時列車も次々と出すなど、競技終了後もスムーズにメトロで移動できた点は評価できた。
地元住民についての影響は少なく、定期券などは五輪開催前に購入しておけば通常価格で値上げ期間中も利用できるほか、私も含めて観光客の利用も多い10回分をまとめて購入する「カルネ」も五輪開催前に購入したものを五輪期間中もそのまま利用できた。
最近では、スマートフォンでカルネの事前購入が可能であったことから、私は7月上旬にカルネを二つ(20回分)購入しておいた。カルネ(10回分)は通常17.35ユーロであるが五輪期間中は32ユーロになっていた。結果的に私は1回あたり1.735ユーロ(約281円)でメトロを利用することができた。事前購入で値上げの影響がないという部分では地元住民に影響が少なかったといえる。
2021年の東京五輪は無観客開催で五輪期間中の外国人観光客の移動はほぼなかったが、今回のパリではメトロの期間限定値上げは観光客から追加で必要な費用を捻出するという発想は今後に生かされることになりそうだ。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)