【交通トレンド分析24】奄美大島を開拓したバニラエア 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 2013年12月20日にANAホールディングス100%出資のLCCとしてスタートしたバニラエアが10月26日に運航を終え、ピーチとの経営統合が完了する。約6年弱の運航の期間での運航終了となる。

 元々はANAとエアアジアが出資して設立されたエアアジア・ジャパン(現在のエアアジア・ジャパンとは異なる)が12年夏から運航を開始したが、両社の経営方針の違いから合弁を解消し、ANAホールディングス100%出資として再出発したのがバニラエアだ。

 成田空港を拠点に国内では新千歳、函館、奄美大島、那覇、石垣、海外では台北、高雄、香港、セブ島への路線を展開し、台北便については関西や福岡、那覇からも運航していた。

 ピーチは就航当初はANAホールディングスの出資比率が低かったことから連結対象となっていなかったが、17年に38.7%から67%に引き上げられたことからグループ会社となり、ANAホールディングスは2社が二つのLCCを持っている状態が続いていた。そのような中で「アジアのリーディングLCC」を目指すべく、両社が統合し、ピーチのブランドでLCCマーケットのさらなる拡大を進めることになった。

 バニラエアは9月で国内線の運航を終え、10月26日までは成田―台北線、福岡―台北線の2路線のみで運航されるが、バニラエアがもたらしたLCC効果は大きい。特に奄美大島はバニラエアが新しいマーケットを開拓したことは間違いない。

 元々はJALグループ便のみで羽田から片道3~4万円が相場であった。安くても2万円前後であったが、バニラエアが14年7月に就航したことにより、片道1万円以下で買えるようになったことで、これまで奄美大島を訪れたことがなかった人が一気に押し寄せた。筆者もその1人だ。

 夏の繁忙期は毎日満席状態で、1日2便に増便した年もあった。約5年間運航された成田―奄美大島線は合計3781便で最終搭乗者数も約55万人を記録した。

 また17年から運航を開始した関西―奄美大島線も約20万人が利用するなど、バニラエアだけで5年間で約75万人が利用した。数年前にバニラエアを取材した際に、就航したことによる奄美大島全体の経済効果が年間42億円となり、「バニラエア効果」という言葉も生まれたのだ。

 これだけの経済効果が出て、高い搭乗率を記録したことで、バニラエアを引き継ぐピーチは10月1日からピーチ便として成田―奄美大島線の運航を開始し、関西―奄美大島線も12月に就航する。奄美大島にピーチ便が飛び続ける限り、バニラエアの名前は語り継がれていくことだろう。

(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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