【マンスリーリポート 観光の現場 46】東北DCから1ヵ月 6県の観光・宿泊関係者に現状を聞く


コロナで足元苦戦 「予約に変化ない」「悲観せず対応」

 東北6県を舞台にした「東北デスティネーションキャンペーン(DC)」が1日に開幕して間もなく1カ月。東日本大震災から10年の節目に行われるDCは、観光の魅力とともに被害からの復興をアピールする絶好の機会と地元の期待も高まっていたが、新型コロナウイルスの「第4波」で、ゴールデンウイーク(GW)を含めた足元の入り込みは厳しいとの声が大勢を占める。DCは半年間のロングランだけに、関係者は危機感を募らせつつも今後の巻き返しに意欲を示す。6県の観光・宿泊関係者に現状を聞いた。

 「隣県の感染者数増加、まん延防止等重点措置の適用の影響で、春の教育旅行の延期や桜ツアーの中止が発生し、予約、入り込みは不安定な状況」。直近の自館の状況についてこう話すのは岩手県の観光施設経営者。

 DCに関しては「東日本大震災から10年の節目ということもあり、東北6県、期間半年という異例の形で設定いただき、地元としても感謝の気持ちでいっぱい」と主催者に謝意を述べる。「多くの方に震災からの復興の状況を見ていただくという意味でも、大いに期待している」と、足元が厳しい中でも今後の展開に期待をかける。

 書き入れ時となるGWは、「期待していた大都市圏からの桜ツアーなどは、催行状況も含めて厳しい部分もあるが、復興道路の開通による効果で、県内、北東北を中心とした域内周遊をするお客さまに期待している」という。

 宮城県の小規模高級旅館経営者は、「県独自の緊急事態宣言、そしてまん延防止等重点措置の適用で、私たち観光業界は静かだ。昨年の休業していた時期と同じように感じる」。DCについても「制限のある中での開催だから、全くといっていいほど反響はない」。ただ、同館のGWの予約は5月1~4日がほぼ満室。「4月下旬はこれからに期待という感じ」と希望を持っている。

 福島県の旅館経営者もDCの影響について「予約に大きな変化は見られない。“まん延防止”のエリアが増えたため、むしろキャンセルが目立つ」と指摘する。GWは首都圏などから予約が入っているが「今後もコロナが落ち着かない限り、キャンセルが増えていくことが予想される」と今後の動向を注視する。

 「DC開始後、予約数に目立った変化はない。コロナで打ち消されている」と、前出と同様の声を上げる山形県の旅館経営者。「DCについて期待はあるが、現状来てくださいとも言いにくい状況」と複雑な心境を吐露する。

 GWは全予約の3分の2を占めていた首都圏と宮城県からの予約がキャンセル。現在は県内客の予約が残っている状況という。

 現在、地元の行政による住民限定の宿泊割引キャンペーンが行われているが、「マスコミからの冷や水により、出掛ける雰囲気になっていない」と、キャンペーンの実施に懐疑的なマスコミの報道に疑問を投げかける。

 山形県の別の旅館経営者も一部マスコミの報道姿勢に触れる。

 「新聞やネットニュースが『県民割』を取り上げているが、医師会のコメントを同じ記事中に入れるなど、キャンペーンに対して懐疑的な内容となっている。結果、タイミングが悪いなどという読者のコメントが殺到している」。

 経営者はさらに続ける。

 「感染対策を十分に行っているため、県内の宿泊業からはクラスター等が発生していない。にもかかわらず、根拠のない主観的な報道ばかりで近場の旅行ですら『悪』とみなし、観光業界や経済を減退させている。もう体力の限界」。

 宮城県の大型旅館経営者は「県の緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の適用で、キャンセルが増え続けている。DC開催の感触が得られず残念だ」と述べる一方、「DCがあったから最悪の状況を免れたのかもしれない。悲観するだけでは駄目。地域により感染状況が異なる。私たちは細やかな対応を考える必要がある」とあくまで前向きだ。

【森田淳】

 

 
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