【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み11】今後の客室消毒ニーズの動向 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


 今回の新型コロナウイルス感染症がどれほど危険なのか、例えばインフルエンザでは致死率が約0.1%程度と言われているところ、今回は3~4%、ワクチンや治療薬が明確でないだけでなく、インフルエンザウイルスと異なり、大人が感染源となっています。ウイルスを保持している日数が約20日と長期に及ぶほか、無症状の罹患者が知らぬ間に感染源ともなり、罹患後に回復したとしても2次感染まで懸念される状況です。

 さらに今後新たなウイルスが発生する可能性すらある中、既に市場は「ニューノーマル」と言われる時代にこの数カ月で大きく変化しており、仮に今回の新型コロナウイルスがある程度終息したとしても、今後新たな生活様式を持つ顧客が求めているニーズに適切に対応していく必要があると言えます。

 今回の新型コロナウイルス感染症が宿泊市場に与える影響について、2020年3月から5月の3度にわたり客室消毒に関する顧客ニーズ調査を実施いたしました。その結果、大半の宿泊利用者が既に客室消毒を施設選択上の必須要件と捉えている様子がうかがえました。

 一方で宿泊施設側から考えますと、客室消毒を実践するには大変な労力とコストがかかります。宿泊施設は今回のパンデミックにより大きな影響を受けただけではなく、さらに費用と労力がかかる対策をしなければならないという点をどう理解すればよいのでしょうか。

 そこで今回、これまでのアンケート調査と異なり、「新型コロナウイルスが終息したことを仮に想定」してもらい、旅館における客室消毒をどのように求め、また考えているのかを調査してみました(全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、2020年6月弊社調べ)。

 客室消毒を徹底している旅館とそうではない旅館を比較した場合、(1)消毒している旅館に対して「強く安心する」が25%、「安心する」が37%、「やや安心する」が25.5%と安心感を連想する回答が合計87.5%という結果でした。

 また(2)消毒している旅館を「ぜひ使用したい」が25%、「使用したい」が38.5%、「やや使用したい」が22%と合計で85.5%が終息したと想定しても、宿泊施設の選択上、客室消毒を重視しているようでした。

 さらに消毒している場合、(3)「他者にぜひ同施設を紹介したい」が22.5%、「紹介したい」が27.5%、「やや紹介したい」が20%と合計70%が客室消毒を実施している施設を他者へ紹介したいと答えており、顧客の態度形成にまで影響を与えている様子がうかがえました。

 次に、新型コロナウイルスがおおむね終息したと仮に想定し、旅館を使用する場合に、客室消毒を徹底している施設と、消毒はしていないが清潔感がある施設を比較した場合、「絶対に消毒している施設が良い」との回答が33%、「消毒している施設が良い」が32%、「やや消毒している施設が良い」が11.5%と、合計76.5%の回答者が消毒していないものの、清潔な施設より客室消毒を実施している施設を重視するという結果でした。

 今回の調査結果が示すように、清潔感よりもそもそもその前に、消毒を含めた防疫対策の有無が「安心感」に大きな影響を与えている様子がうかがえ、その取り組みいかんが、顧客から大きな支持を得られる可能性を示唆しています。

 つまりこの「ニューノーマル」時代では、防疫対策の内容が新たに提供サービスの質として加わり、今後はその取り組みの有無のみならず、どのように工夫して効果的な対策を打ち出しているのかが運営施策の一つとして非常に重要であると考えるべきなのかもしれません。

 
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