【ニューノーマル 新常態の観光戦略19】広報担当の短期交代の弊害 神崎公一

  • 2022年3月20日

 年度末を迎え、人事異動の季節がやってくる。新聞社で経済官庁や企業を担当していた時、「また、交代ですか」としばしば苦言を呈された。

 取材先の言い分ももっともで、記者は1、2年、短いと半年程度で担当分野の配置換えがある。企業や役所の幹部に新任あいさつをして、ようやく事情をのみ込んだところで、後任を連れて交代を告げに出向くこともあり、冒頭のひと言が発せられるのだろう。

 しかし、メディアの立場からも言い分がある。情報提供側である小欄の読者の皆さんの体制についてだ。メディアと同様、自治体の担当者は異動を頻繁に繰り返す。観光関係でも、本庁および道府県の東京事務所の担当者が2、3年で交代してしまう。会見などで何度か顔を合わせ、じっくり話ができるころには「お世話になりました。地元に戻ります」と連絡がくる。

 さまざまな分野を経験させ、キャリアを積ませようという狙いだ。ただ、メディアを通じた情報発信は初めてで、観光関連とは縁がなかったという新任者も多い。極端な例を紹介すると、ある自治体の東京事務所の担当は入庁以来、人権擁護関連部署が長かったそうで、地元の市町村の観光課や温泉、旅館関係者のネットワークがなかった。取材依頼をしても、本庁に問い合わせをするから時間が掛かるし、的を射ない回答も多かった。

 本人も苦痛だっただろう。1年もしないうちに本庁に戻った。再び人権擁護部署だという。特定の分野で研さんしてスペシャリストに育っていくのも大切だろうが、首を傾げたくなる人事だった。ただし、本人にとっては土地勘のある古巣に戻れたことは良しとすべきだ。

 逆に、“観光のプロを育てよう”という人事政策がうかがえる例もあった。「ぐんまちゃん家」で知られる東京・銀座にある群馬県ぐんま総合情報センターには、県庁からの転勤者だけではなく県内市町村からも職員が出向し、1、2年程度、観光や物産のPR、取材対応をする。その後、地元に戻った際にも観光関連の部署に就くケースが多かった。

 そのため、同県の市町村に電話取材をしたり、現地を訪ねたりすると、「ぐんまちゃん家」で顔なじみとなった職員と再会でき、話が円滑に進むこともあった。また、「ぐんまちゃん家」で、短期間とはいえ共に働いた職員同士という経験から、東京と地元でネットワークが築けるという利点もある。

 他府県でも、東京事務所勤務で初めて観光や物産販売の担当となり、必死で勉強する職員もいた。休みの日には、東京周辺の観光地に出かけ集客方法やPR戦術を勉強したり、他の自治体の観光担当と情報交換をしたりして、短期間で観光分野のエキスパートになろうと努力を重ねている例を知っている。しかし、こうした人事政策や情報収集に熱心な職員は多いとはいえないようだ。

 宿泊業や交通事業者の場合は、担当替えがあっても全く異なる部署であることは少ない。それまでの経験が生かせる仕事上の土地勘が備わっていることが多い。ただ、情報発信、広報PR業務は、その組織のブランドイメージを左右する重要ポストだ。人事権者には、このことを肝に銘じておいてほしい。

 (日本旅行作家協会理事、元旅行読売出版社社長)

 
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