公益財団法人九州経済調査協会は10日、新型コロナウイルス感染拡大による宿泊施設への影響に関する分析結果を発表した。
ここでは、市区町村別の宿泊施設の稼働状況をリアルタイムで把握できる「日次宿泊稼働指数」を活用し、2020年10月末時点における新型コロナウイルス感染拡大による宿泊施設への影響を分析します。
2020年10月における全国の宿泊稼働指数は41.3となり、前月の32.0より9.3pt高い水準となった。2020年4月を底にして6カ月連続で改善している。前年差は▲16.5ptと、2020年2月以降で低下幅が最も小さくなった。新型コロナウイルスの感染状況が9月から横ばいで推移するなか、Go Toトラベルキャンペーンの対象に東京都発着の旅行が追加されたことで、稼働の回復トレンドが続いた。
2.地域ブロック別の宿泊稼働指数:関東周辺でも改善進む
2020年10月の宿泊稼働指数を地域ブロック別にみると、東北(57.2)、中国(55.7)、北海道(53.1)など地方圏で水準が高く、南関東(29.1)、近畿(32.9)、東海(36.6)など大都市部や沖縄(37.4)で低い。前月差でみると、すべてのブロックでプラスとなり、東北(同+14.8pt)、北関東(同+14.3pt)、南関東(前月差+11.9pt)など関東周辺や、沖縄(同+11.9pt)で改善幅が大きい。
3.都道府県別の宿泊稼働状況: 6県で前年超え
2020年10月の宿泊稼働指数の前月差を都道府県別にみると、前月の改善幅が大きかった山口県を除く46都道府県で前月差プラスとなった。10月からGo Toトラベルの対象に加わった東京都(同+14.3pt)の改善幅は全国を上回っている。また秋田県(同+21.3pt)、岩手県(同+16.5pt)など東北地方や、栃木県(同+15.3pt)、茨城県(同+14.7pt)など北関東の諸県の改善幅が大きく、東京都を発地とする旅行需要が喚起されたものとみられる。岩手県、秋田県、群馬県、福井県、滋賀県、山口県の6県では前年を上回った。
4.Go Toトラベル対象拡大により東京の改善鮮明
東京都特別区部の2020年10月の指数は25.4となり、水準はいまだ低いものの、前月差+14.1ptと全国を上回る改善幅となった。一方、東京との往来が多い大都市においては、前月差でみてほとんどが全国よりも小さい改善幅となっている。10月よりGo Toトラベルキャンペーンの対象に東京都発着が追加されたことで、主に(東京→地方よりも)地方→東京という方向の旅行(観光・出張)需要や、東京内における需要が喚起されたことが示唆される。
※2020年4月における緊急事態宣言の発令に伴い、宿泊施設の休業がみられていることから、本稿の宿泊稼働指数は、休業した宿泊施設を除くための処理を行っている
※宿泊稼働指数は日次の空室の水準を指数化したもので、九州経済調査協会が独自に推計。原数値は0から100の間の数値をとり、稼働状況が良い場合は100に、稼働状況が悪い場合は0に近づく。算出方法は文末の補足を参照
※2020年4月に20日以上かつ2020年5月に20日以上空室が提供されている施設のみを対象とし、過去に遡って指数を算出した