【テツ旅、バス旅 66】スカイレール 鎌倉 淳


 広島駅からJR山陽線で約20分。瀬野駅に到着します。橋上駅舎の改札口を出て、コンコース伝いに歩くと、スカイレールのみどり口駅です。改札機二つだけの簡素な改札口。階段を上ると小さなホームで、スキー場のゴンドラのような乗り物が停まっています。

 これがスカイレール。世界唯一の「ロープ駆動式懸垂型」という新交通システムです。懸垂式モノレールとロープウェイを組み合わせたような仕組みが特徴で、鋼桁のレールにぶら下がったゴンドラ車両をワイヤロープで引っ張ります。

 分かりやすく書けば、線路が懸垂式モノレールで、車両がゴンドラです。省スペースで建設でき、低騒音、登坂性能に優れ、急カーブも曲がれるといった多くの長所があります。

 いわゆる新交通システムに比べると、建設費も輸送力も3分の1程度。つまり、新交通システムほどの輸送力を必要としないエリアに向いているシステムです。こうしたメリットを生かせる区間として、世界で最初に導入されたのが、このスカイレールでした。

 スカイレールは、山麓に位置するJR駅と、山上に開発された住宅地とを結んでいます。開業は1998年。運行距離は1.3キロメートルと短いですが、標高差は160メートルもあり、最大223パーミルという急勾配に索道が引かれています。

 実際に乗ってみると、仰ぎ見るような急勾配を、ぐんぐんと力強く登っていきます。乗っているのはゴンドラなので、スキーに来ているような気分になりますが、眼下に広がるのは、立派な戸建て住宅が並ぶニュータウン。その非日常感が、旅行者にはたまりません。乗り心地は小刻みに揺れるものの安定感があり、快適。あっという間に終点のみどり中央駅に到着しました。

 坂道の多い郊外ニュータウンで、こうした乗り物がもっと広がればいいと思うのですが、現実には、このシステムが他の場所で導入されることはありませんでした。結果として、スカイレールは「世界唯一」のシステムになってしまい、量産効果が得られないことから、部品調達や設備更新に多額の費用がかかる事態に陥りました。そのため、来春に廃止されることが決まっています。

 最先端の独自システムには多くの長所がありますが、普及しなかった場合、更新コストがかさむという難点があります。それが廃止に至る理由になったようで、残念な話です。

 (旅行総合研究所タビリス代表)

 
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