2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目標に、政府は訪日旅客数4千万人を見込んでおり、空港や都市部は常に外国人客でにぎわっている。それに伴い、日本全国のホテル客室は高稼働が続き、客室数が不足しているのが現状である。
その中で健闘しているのが、ビジネス系ホテルといわれる宿泊特化型ホテルチェーンである。20万室以上のマーケットに成長している。
以前の宿泊特化型ホテルは、シティホテルと比較され「料金が安く客室が狭い」という印象であった。ゲストにとっても泊まるという目的を果たすのみの宿泊施設であったが、近年、宿泊特化型ホテルは著しい進化を見せている。
先日、東京の某宿泊特化型ホテルを利用したが、スタッフの接客技術もトレーニングされたものであり、素晴らしいものであった。シティホテルと同様に、スタッフの笑顔の「いらっしゃいませ」から始まり、朝食の案内、そして客室ベッドの枕の仕様まできめ細かな対応をしていた。
客室は、シティホテルと比較すると狭いが、宿泊に必要なアメニティや備品などが機能的に備え付けられていた。ベッドも高級セミダブルが使用されており、寝具商品も機能的にも優れていた。バスルームのアメニティグッズも、男性化粧品まで用意され徹底した商品へのこだわりが見られた。
朝食は、同ホテル内に位置するテナントのファミリーレストランの宿泊者用朝食セットであった。洋食と和食が用意されており、味も量もちょうど良いものであった。シティホテルのように豪華なものでなくても十分に楽しめる内容であり、出発が早いゲストに対しては、軽食の弁当まで提供する徹底ぶりであった。
今の時代、ブランド力だけでホテルにゲストを呼べる時代は終わった。ゲストのニーズも多種多様になり、ホテルも目的別に利用される時代になった。「観光立国」と「企業の生き残り」という二つの課題とともに、ホテル企業のゲストニーズへの本格的取り組みが始まっている。
(NPO・シニアマイスターネットワーク九州・沖縄ブロックディレクター 中村国際ホテル専門学校准教授、牧一郎)