「働く」ということの社会環境の変化はニュースの中だけで扱われているものではなく、実際に現場で起きている。われわれのホテル・レストランでも求人に対する応募者数は減少している。それも当然のこと。
総務省によると15~34歳の就業者数は約2千万人だった10年前に比べて現在では1630万人と約20%、フリーターも217万人から現在は180万人と減少しているそうだ。時給を上げて就労時間を短くし、風通しのよい魅力的な働く環境を提供しないと若い人はもう集まらない。
しかし、そうして集めた人材も少し厳しくするとすぐに辞めてしまう。いや自分たちが働いてきた環境よりも随分と良くしてもなお辞めてしまう。おおらかだった勤務時間内の学びも厳格化され、経営を取り巻く環境は厳しくなっていると実感する毎日だ。
企業も個人も厳しい競争環境の中、永続するには価値を高め、コストを下げることが必要である。他者よりも強くなければ生きていけないのだ。しかし、働く環境を良くすることは強さと矛盾するように感じてしまうときもある。
今まではがむしゃらに働くことが個人の成長にもつながってきた。頑張ることを個人に依存して価値の向上を実現してきたのかもしれないが、それを信じてきたのだから「こんな働き方ばかりでは将来どうなってしまうのか、競争の中で勝ち残っていけるのか」と不安に思ってしまうこともある。
しかし、愚痴を言っても仕方がない。世界は変わっているのだ。働く時間が短くなり、時間あたりの生産価値が上がることは豊かになることだ。
われわれはパラダイムを変え、進化するITを駆使し、流通や仕組みから全てに改善を重ねて業務の効率化と提供価値の向上を両立しなければならない。今こそわれわれ経営陣の能力を向上させるときだ。大きな矛盾を扱いながらより豊かになっていく。
先人たちが豊かな日本を作ってきたように、現在のわれわれもより豊かな社会に向けて成長が必要なのだと、難題を前に現在の取り巻く素晴らしい環境に感謝したい。
(NPO・シニアマイスターネットワーク会員 三原 直)