【シニアマイスター経営の知恵27】そこに、人が介在する意義 川村敦子


 人材育成に携わる中で感じる大きな流れのひとつが、自動化・機械化を始めとする、目覚ましい技術革新だ。

 取引先企業を訪問した時、受付で人型ロボットが出迎えてくれた。わずかに首を傾けてこちらの目をのぞき込む。その表情は一瞬、相手が機械であることを忘れさせる。人型ロボットの技術開発は日本の得意分野だ。
 「ピープルビジネス」の典型業種である観光産業にも実用化の動きが着実に及んでいる。

 道に迷っている人を察知して声をかける人型ロボット。日立製作所が今春、2018年に向けて実用化を発表したニュースも記憶に新しい。周辺の観光情報の提供に導入した業界企業の事例もある。順番待ちのストレス緩和や話題性による増客が期待されているそうだ。

 観光産業は、体験や人との出会いの瞬間が大切な商品価値となる。例えば「いらっしゃいませ」ひとつでも、そこに迎える側と訪ねる側の心の通い合いがあってはじめて、喜びや感謝の言葉になる。ロボットのそれには(今のところ)感情の交流や分かち合いはない。技術革新は確実に加速する。そして仕事や働き方のありようを人にあらためて問う機会になるだろう。では、どうするか。

 大切なことのひとつは、働く人1人1人が、そこに自分が関わる、つまり人が介在する意義を行動レベルで理解し、体現することである。「あなたの仕事は?」と問われた時、「案内係です」「会計係です」の認識に留まっては、人の心を動かし、記憶に刻まれるような現場の「考動」は生まれない。

 豊かな観光体験や情報を持つ、顧客のニーズやウォンツを推し量ろうとする前に、日々の仕事にも頑張りが効かず、サービスの質に影響が及ぶ。企業側にとっては人材の流失につながりかねない。

 「あなたが、そこにいる価値」を、お客さまが認め、共に分かち合う光景こそ不変の経営資源であることを、技術革新が進むほど忘れてはなるまい。

 (NPO・シニアマイスターネットワーク会員 株式会社ホスピタリティリソーセスジャパン代表取締役社長・川村敦子)

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