東京オリンピック・パラリンピックをはじめとし、関西では大阪万国博覧会などの重要行事の連続で、ホテル業はおおむね堅調を維持している。
日本の人口減少の現実を考えると、国内の旅行市場が今後大きく成長することは難しいが、世界市場に目を向けると、国連の世界観光統計では2018年の海外旅行者数は当初予想を大きく上回る14億人を突破し、対前年8千万人増と成長率約6%となっている。その中で、日本への海外からの旅行者も、昨年は対前年8.7%増となっている。今年に入ってインバウンドの伸びは少し緩やかになっているものの、今後大きな自然災害や国際紛争がない限りは、政府の施策もあり、インバウンドは順調に伸びていくと考えられる。
しかしながら、この状況が未来永劫(えいごう)続くという保証はないので、堅調な今、もう一度原点に立ち戻り、マーケティングの観点から検証することが必要な時期ではないかと思われる。
これからは、スモールラグジュアリータイプのホテルの需要が増加していくことが予想される。海外のアッパークラスの人々は、自分たちが行きたい場所に、自分たちの泊まれるホテルを必要としているが、海外に比べて、日本のラグジュアリータイプのホテルは、まだまだ数が少ない。海外では、ラグジュアリータイプのホテルが数百であるのに比べ、日本のラグジュアリータイプのホテルは数十軒にすぎない。既に、外資系ブランドのホテルや、外資の独立系ホテルは、ラグジュアリータイプのホテルを日本に展開してきている。
日本のホテルも、低価格の単機能型のホテルではなく、従来のホテル機能に体験型の付加価値を付けたものや、ホスピタリティに特化したものなど、新しい旅の価値観を提案する、ライフスタイルホテルを増やしていかなければならないのではないだろうか。
(NPO・シニアマイスターネットワーク近畿ブロック理事 大阪学院大学経営学部学部長 ホスピタリティ経営学科教授 株式会社ファンプラス代表取締役社長 森重喜三雄)