これまで観光地の盛衰は、景気、交通が至便、素材の良さ等によって決まるといった考え方から、“一見さん”を効率良く迎えることに主眼が置かれ、リピーターづくりの視点が欠けていたと言わざるを得ない。
まず考えなければならないことは、地域は“選ばれる側にいる”のであり、お客さまは“呼ぶ対象”ではなく、“つくる対象”と認識することである。そのためには、顧客満足度を高め、リピーター率の向上を図り、安定した客数を確保し、地域の経済効果を高めていく発想がポイントである。
以前、ある県の担当者から「県全体の観光客数は伸びていたが、消費金額は増えなかった。その原因として考えられることは、地域の魅力向上や販売する商品のレベルアップを怠り、キャンペーンを中心に広報・宣伝活動等誘客戦略ばかりに注力し、本来やるべきことを忘れてしまっていた」という話を伺ったことがある。
今や、地域が視野に入れている既存のサイズでは納まりのつかない需要が発生しているのだから、地域同士が張り合ってムダをする時代ではない。
観光を考える時、過去の区割りにこだわっていてはいけない。地域における観光に携わる人たちの交流密度を高め、人の動線をつくり、広域化させ、実効性のあるアクションを起こすことが求められる。
下手に連携するとお客さまを奪われかねないとか、なぜ隣の市町村の紹介や宣伝までしなければならないのかといった“境界意識”を改め、競争相手と自分の両方を組み合わせた時の面白さを見つけようという心の柔らかさが出発点となる。
お互いが足らざる機能を補うことを基本として、それぞれが相手の地域の良さをわが事のように説明することができる存在、すなわち、多様な目で地域資源の良さを見極め、磨き込み、評価することができる“地域魅力の語り部”が不可欠である。
(NPO・シニアマイスターネットワーク東北支部代表 株式会社東北地域環境研究室代表、志賀秀一)