
ここ数年のインバウンド需要の急増と東京五輪開催が相まって、ホテル開発ラッシュが続いている。そういった意味で「宿泊客室数」の供給が必須のことから「ホステル」といった業態も増え「民泊」などの規制も緩和されてきている。客室という来街者の宿泊受け皿としてのホテル(ないしはホステル)は増える傾向にある一方で、今後その差別化競争も激化していくことになると予測される。
「泊まるだけ」ではなく、体験価値を充実させたいニーズを持ってして、ホテル選びをしていくという流れは自然な展開になると思われる。一つの考え方として「ホテルはその地域のショーケース」と捉える視点も重要になってくる。
来街者がより充実した旅行を求めていく上で「その地域ならでは!」のモノでありコトというのは、ホテル選びの重要な選択肢になるであろう。当然ホテル側も、選択されるべく差別化要因をしっかりと打ち出す必要が生じてくる。その中で、「地域資源をいかに企画していくか」という概念が欠かせなくなる。
訪れたことのない地域を歩いてみると、なんら都会と変わらない風景…コンビニやチェーン店、ガイドブックでおなじみのスポット…などを目の当たりにすることがあるが、果たして旅行者や消費者はそれを求めているだろうか。来街者は、予定調和ではない新たな発見、気づきや、刺激を求めていないだろうか。
そんな着眼から、地域ならではの宝物・物語を発掘し、発信、それを通じた交流を促すホテルであれば、魅力度も高まっていくとも考えられる。地域資源の情報からそれを体験、体感できる場としてのホテルと捉えると、ホテルこそが地域のインフラであり、メディアにもなっていく。そんな視座が経営する上でも必要になってくるのではないだろうか。
(NPO・シニアマイスターネットワーク会員 株式会社ホロニック代表取締役、長田一郎)