2024年4月6日現在300件以上のDMO(観光地域つくり法人)が登録されている。
異彩を放っているのが下呂のDMOだ。彼らは自分たちのDMOをEDMOと呼び、エコツーリズムを背骨に据えたDMOを展開している。
エコツーリズムは自然に極力負荷をかけず自然の恵みを享受して楽しむ観光だ。
下呂の飛騨小坂は落差5メートル以上の滝をチェックし、200の滝を網羅して1冊の写真集にまとめ、観光客を魅了した。2018年度エコツーリズム大賞の大賞を受賞している。
エコツーリズムは自然を見るツアーだが、日本はさらにそこに住む人たちの生活・文化も対象にしている。
金山地区には「路地裏巡り」のツアーがあり、人気だ。路地裏の細い道を行くとレトロな香りが立ち込め、途中に奇麗な水場がある。そこで現地のお母さんたちがスイカを冷やしたり、皿などを洗っている。そういう生活が多く観光客を集めている。
「その地の生活文化が対象になるので地域の特徴が色濃く出る。それを観光に生かした」と下呂温泉観光協会の瀧康洋会長が下呂で開催されたエコツーリズム大会のあいさつで語った。
最近、感動した本を読んだ。山口由美さんが書いた「世界の富裕層は旅に何を求めているか」という本だ。
山口由美さんは言わずと知れた「アマン伝説」という名著を書いたトラベルライターだが、彼女の提案の一つが、まさにラグジュアリーエコツーリズムだ。
海外では富裕層が先を争って参加するエコツーリズムが日本では「エコ=節約的な」と伝わってしまったので遠回りをしてしまった。正しくはEcology(生態系=自然と自然のかかわりあい)を楽しむ、本物志向に訴えるツアーということだ。
この本を読んでいて「わが意を得たり」と膝をたたいた。
アメリカのナショナルパークにはその地を代表するアイコニックなホテルがある。そういう魅力的ホテルに長期滞在し自然の恵みを享受するというエコツーリズムがこれで定着するかもしれない。エコツーリズムに新しい扉が一つ開きそうだ。
(淑徳大学非常勤講師 辻野啓一)