【シニアマイスター経営の知恵 154】アフターコロナと従業員教育 常磐ホテル経営管理室室長 鈴木尚史


 昨今の宿泊産業における人材不足は深刻だ。

 旅行の個人化、高価格化により求められる接客ハードルが上がり、数で勝負するには人手が集まらない。となると現状社員をよりしっかりと教育することこそが肝要である。

 中小規模旅館の教育体系は未熟で、クレームがないことを最優先とする消極的スタイルや、経営がコミットしない現場丸投げスタイルが多い。外部委託するにしても、航空会社の教育流用やレストラン・ホテル研修は和風旅館の人が関わったプログラムが少なくてしっくりこないことが多い。じゃあ研修の時間も取れるし、自社で一から全部作ってみようとやってみたが、大変苦労した。新入社員を基準に中途採用、アルバイトにも流用できる体系の作成と共有化する作業を行い1年半もの時間を要した。ホスピタリティ編・技術編・知識編に分けテキスト化したこと、主な項目を動画化したことが大きな点だ。特に動画はQRコードを配布し個人携帯でいつでも視聴できるようにすることを行い、若い世代に違和感がなく導入できた。

 学生を含めアルバイトにはホスピタリティ編の動画視聴を義務化し、現場での簡易動作訓練を行う。中途採用については各人の能力に応じた動画視聴をさせてから勤務させるようにした。現状の社員は一般研修と動画に加え、1カ月に1回の季節の料理を試食と提供サービスを行う6名での小規模試食・接客訓練と3カ月に1回中規模な試食会を行うようにした。教官役が立ち居振る舞いや言葉遣いの指導を行う様子も動画に残すようにしている。これにより接客技術のレベルは確実にアップした。接客実技における曖昧な点の明確化、生活スタイルの変化に対応した接客方法等に苦心したが、和の伝統や自社らしさを再確認できたことは大きな収穫だった。

 社員教育に終了はなく継続こそが力だ。教官役の指導能力や知識力が不足しがちで負担が大きいことが課題であるが、アフターコロナの繁忙期にも引き続きの努力に務めたい。

 (日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 常磐ホテル経営企画室室長 鈴木尚史)
         

 
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