ホテルの現場で20年働き、現在は教育の現場で勤務をしている。コロナ禍で昨年は新卒求人が激減し、ホテルでの勤務を目指す学生たちも大きな影響を受けたことは言うまでもない。しかし、今年に入り状況が変わり、昨年の倍以上の求人を多数のホテルからいただいている。
多くのホテルの人事担当者と接する中で、以前から感じていたことがある。それは人が集まるホテルと人が集まらないホテルがあることだ。
ここで言う人とは「就職希望者」を指すのだが、昨年のように求人が少ない状況でも集まらないホテルは人が集まらない。専門分野を目指す若者も興味を持てないのだ。
学生が最も身近に感じるホテリエは人事担当者であり、その姿に憧れを抱いている学生も少なくない。やはりより良い人材を集めるためには熱意をもった人事担当者が必要であると思われる。
私の住む札幌では2030年新幹線の延線に向け大型ホテルの開業情報が多数出ている。札幌になかった外資系ホテルブランドの参入など楽しみではあるが、一つ懸念がある。
それは人材の確保である。慢性的な人材不足といわれる業界ではあるが、送り出す側の私にとっても大きな課題である。学生たちになぜホテリエを目標としたかをリサーチすると、圧倒的に「自分が宿泊したときに対応してくれたホテルの人に憧れて」という答えが最も多かった。この事実はおそらくホテルで働く皆さんは気付いていないと思う。
多数の学生がホテルを利用する機会、それは修学旅行や部活の遠征である。笑顔を忘れていないか? 下を見て仕事していないか? 年齢で対応を変えていないだろうか? 単調な作業も心を込めて丁寧に対応しているだろうか?
「人を優しく思いやること」。北海道宿屋塾代表の柳森氏から教わった言葉である。基本的なことであるかもしれないが、これこそがホテル業界にとって大切な言葉ではないかと思う。
多くの若者にとってホテリエが憧れの仕事となるよう私も微力ながら貢献していきたい。
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 札幌観光ブライダル・製菓専門学校教務部次長、ホテル学科担任 大内智博)