【シニアマイスター経営の知恵 136】コロナ禍の神話 右京幸雄

  • 2021年9月10日

 教育社会学者で現オックスフォード大学教授苅谷剛彦氏の著書「知的複眼思考法」(1996年講談社)は、氏がまだ東大助教授であった頃の本だが、読者がものごとを多面的に捉え直し自分の頭で考えてみるための具体的手法が提示・解説されており、出版から25年を経た今も読み継がれている名著だ。

 「根拠がなくてもそれを自然なこと、あたりまえの常識として通用するものの見方、それをフランスの思想家ロラン・バルトは現代の『神話』と呼ぶ。『神話』を鵜呑(うの)みにしたままでは単眼思考に陥る。そこにとらわれず抜け出すことがものごとを相対的に捉える複眼思考を身に付けるための第一歩」と氏はいう。

 新型コロナウイルス禍でビジネスの様相は一変した。

 ビジネスパーソンの出張やインバウンドを含む観光需要に支えられ活況を呈してきたホテルは、県境をまたぐ移動自粛や海外渡航禁止による利用者激減で営業停止に追い込まれた。一方、出社を制限されたビジネスパーソンによるテレワークやワーケーションの拠点としてのホテル利用が広がり始めた。感染の軽症者向け宿泊療養施設として客室を提供するホテルもある。一室を借り切りそこから為替や株の情勢を日々動画配信し続けるYouTuberもいる。

 感染拡大防止のための営業時間短縮や休業要請、酒類提供の制限が飲食店へ与えた影響は計り知れない。疲弊する一方の飲食業界だが新しい動きもある。ウェブサイト上でのみ存在し、デリバリーやテイクアウトに特化した「店舗のない飲食店=ゴーストレストラン」なるものが急増した。一つの建物内に入居させた複数の外食店に対し、キッチンを貸し出すとともにゴーストレストランとしての運営全般を管理する外食ベンチャーまでもが現れた。

 ホテルは宿泊場所を提供するところ、飲食店は外食したい人たちが足を運んでくれるところ、というあたりまえの常識にとらわれたままなら、コロナ終息まで事業再開は果たせない。

 コロナ禍だからしかたがない、との神話に取り込まれてはならない。

 (一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 右京幸雄)
         

 
 
 
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