【シニアマイスター経営の知恵 131】コロナ後に中規模旅館が生き残る方法は 常磐ホテル経営企画室 鈴木尚史


 感染症拡大から1年以上たち、金融機関からコロナ後の会社のあり方を示せと言われ戸惑った経営者も多いのではないだろうか。平日稼働を支える団体バス旅行やビジネス需要の激減で基幹売り上げの見込みが立たず、そう簡単には固定費の削減も見込めない。今後も顧客占有スペースの増加傾向は続き、食事スペースの増加により面積当たりの収益性は半分になり、旅館においてRevPARに直結する1室利用人数は限りなく2名に近づくことになるであろう。そんな中、将来の会社のあり方を示すのは至難である。

 企業の継続性を維持するためには、単価の大幅引き上げで高級化するか、効率化するかしかない。中規模旅館を高級化するためには、(A)営業の縮小や分割(B)設備改善(C)料理サービス向上の三つが必須である。抜本的な金融支援や社員教育体制の見直し、大幅な商品群再構成の必要などハードルは高い。ただし高級需要先行きはある程度見通しがある。物価が安くインフラが安定した「枯れた先進国」として魅力ある日本に高額FITが見込めることや、移行期間には海外旅行の代替需要として高額国内客がおり、魅力のある商品が作れればという条件が付くものの明るい出口が見える。

 もう一つの解決策はニセコなどに代表される地域内分業である。旅館において1泊2食は高単価を見込める半面、原価率悪化と人件費の重みで収益を悪化させる。最も費用がかかる食事を共同経営や分業を導入し、効率化を目指す。旅行会社や行政を巻き込んだ観光地法人の設立などを行い、温泉大浴場、イベント的な催し、土産物などの販売の分業も収益確保しやすい分野だ。観光の主眼である地域の魅力を造成しつつ進めることも可能である。

 どれもこれもハードルが高く簡単なことは何一つない状況ではあるが、弊社でも上記の考えに即し、少しずつ改善と対策を行っている。「最も強い者が生き残るのではなく、唯一生き残るのは、変化できる者である」は至言である。

 (一般社団法人日本宿泊産業マネジメント協会会員 株式会社常磐ホテル経営企画室 鈴木尚史)      

 
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