【シニアマイスター経営の知恵 129】日本に蔓延る病と本当の国難 日本宿泊産業マネジメント協会会員・立教大学観光学部客員教授 平浩一郎


 東京五輪まで2カ月となったが、コロナ感染に関しては、遅々として進まぬ検査体制・ワクチン接種、4カ月もの休眠状態が判明した接触確認アプリ、ザルに等しい検疫体制等、政府の後手後手かつ場当たり的な対応は枚挙にいとまがない。感染しにくいといわれる東アジア民族、とりわけ同じ島国である台湾のコロナ感染累計死者数12人(5月14日現在)や昨年の実質GDP成長率3.1%と比べると、日本の惨状は人災レベルであることは明白である。

 このお粗末さは、バブル崩壊の1990年ごろから30年以上も続くゼロ成長と同根である、日本社会に長く根付く“なあなあ病”によるものでもある。個々のレベルでは誤りと気付いていても、保身のため組織の意思決定に際して大方が間違いを看過してしまう病であり、政権や大企業にも最近顕著にみられる公文書や財務諸表等の隠蔽(いんぺい)・改竄(かいざん)・捏造(ねつぞう)という症状も伴う。また、投票権のない将来世代から前借りする、その場しのぎの財政出動政策で日本の債務総額はGDP比2・5倍を超え、他国と異なりコロナ後の打つ手が限定されている状況もこの病の結果と言える。さらには、リーマンショックの起因となったサブプライムローンをほうふつさせる、昨今の住宅バブルを支えている当初10年だけの低金利住宅ローンも、以前と同様な金融危機を起こす時限爆弾でもあり、これもこの病による潜在的なリスクである。

 この病は、近代以降の日本において前回のまん延の体験者がいなくなるおよそ80年周期で感染拡大が顕在化するようで、約160年前の幕府崩壊や80年前の敗戦は、いずれもこの病がまん延した日本が外圧をきっかけに国体の根本転換で収束を図れた結果である。現在の日本は就労人口が激減し自国民だけではもはや経済は支えられるものはなく、他の欧米先進国と同様の移民政策のような「国体の転換」を受け入れざるを得ない。一方、今後激化が予測される米中対立により外圧は高まり、従来の日本経済の成長戦略の担い手である輸出産業に加えて、成長著しかった観光産業も今回のコロナに続いて直撃される可能性が高い。コロナはいずれ収束を見るだろうが、本当の国難はコロナ後であり、この病を能動的に根治できなければ、ゆで蛙(がえる)のように日本は衰退してしまうであろう。

 
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