3月11日は東日本大震災の発災日から9年、北海道胆振東部地震から約1年半である。去る1月17日は阪神大震災から25周年。このように日本列島はいつも自然災害に直面してきた。
私は仕事柄、阪神大震災や熊本地震で被害を受けたホテルの現場を訪問し、発災時に現場におられた社員の方々からさまざまな体験談を伺い、対応の記録を見せていただいた。
ホテルや旅館はお客さまに相当に高度なレベルで安心・安全な環境とサービスを提供してこそ初めて豊かな気分でそこでの滞在を安心して楽しむことができる存在である。
かつて、ロンドンの高級ホテルで一晩に数回、消防自動車のサイレンが客室の下で聞こえ、ホテルに消防士が入っていくのを見たが、ホテルからは何の放送や連絡もなかった。国により火災等非常時の対応は異なるが、その施設にいるお客さまには安心のため丁寧な情報の提供が必要であり、それがパニックなどの2次被害を防ぐことになる。
火災事故の大半はおおむね人災であり、建物全体で同時に発災することはテロ等の場合を除き考えられない。しかし、地震では一瞬にして建物全体に被害が及び、時間の経過とともにその被害が増大する可能性もある。
警報など機械の表示は必ずしも信用できない場合が多くあり、被害状況も人の目での確認が全ての判断の基本となる。発災時にその現場にいる社員の上位者が指揮官になり、建物全体の安全状況やけが人等を至急確認するなど超非常時対応を実施せざるを得ない。大震災ではそのときに現場にいる社員等のみでの対応しかできないことを十分に理解し、対応策を立てることが大切である。
また、大震災発災後には“ホテル”はホテルの機能を失い“単なる一建築物”ということを考えることが必要である。大震災では病院の機能もかなり失われる。このようなときにホテル外部からの災害弱者を収容する状況での対応や責任をも十分に考えてほしい。
発災後のホテルではホテル内で働いている社員等とホテル利用のお客さまとが協力して一刻も早く館内の安全環境を確認し、安全な避難までの時間を安全な環境で過ごせるかを考えることが大震災対応のポイントと考える。
(NPO・シニアマイスターネットワーク副理事長 満野順一郎)