新型コロナウイルスの感染は、この夏の「第5波」ではピークに達し、8月中旬に全国の1日の感染者数が2万5千人を上回り、猛威を振るい続けていたが8月下旬以降、一転して急速に減少した。
患者数の減少理由は、ワクチン接種の効果に加え、医療が危機的状況に陥ったことが広く報道されたことで、一般の人たちが感染対策に積極的に協力するようになったこと。受け入れ側の施設でも徹底した衛生管理を行い、7月下旬から8月にかけての夏休みや盆休みも間引き営業や宿泊人数制限の下で厳しい営業を行ってきたことなどさまざまなことがあげられる。
感染者数の減少に伴いコロナ感染拡大防止のための厳しい規制も解除され始めたが、寒くなって乾燥するとウイルスの感染力が強くなり、12月や1月の帰省や旅行などで人流が盛んになると再び猛威を振るうとされる第6波を警戒してか行動が慎重になっている。
同様に先日政府がGo Toトラベル再開を2月に考えている旨の報道があった。それも一理あるが、われわれ宿泊業界は現在置かれている苦境から1日も早く脱することが先決だ。そのためにも今まで同様の衛生面の徹底は順守して、リバウンドを防ぐことが大事だ。
コロナ疲れはわれわれだけではなく多くの国民も感じている。新年会や移動も昨年より慎重に対策をしたい。気を緩め感染拡大にならぬよう引き締めたい。
また同時並行で長引くコロナ禍で資金繰りに苦慮する多くの宿泊施設に追加融資や返済猶予など国と協議をして早急に実行しなければならない。深刻な人手不足に対しても手を打たなければコロナが落ち着いた後では労務倒産となりかねない事態になる。もはや自助努力では解決できない施設も多い中、業界団体一丸となり取り組んでもらいたい。
いずれにしても、コロナは現時点でまだ収束しておらず、すぐには解決しない問題だ。宿泊客が戻るためにも、感染防止への十分な対策をとりながら、今それぞれの宿や観光地は何をなすべきかをもう一度考え直したい。
(委員・佐藤康=岩手県繋温泉・湯守ホテル大観)
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【委員会より】
世間の話題は新しい変異株「オミクロン株」でもちきりです。12月初旬の段階では、国内の感染者数は落ち着いていますが、佐藤委員のコメントにもあるようにコロナ禍は収束しているわけではありません。特に観光業、宿泊業に携わる者としては、これからの対応こそ、重要な時期を迎えるものと考えます。
コロナ特別融資や雇用調整助成金の特例等でやりくりしてきたこの20カ月から日常を取り戻す過程でも資金需要は発生します。その際にその時点の負債が問題視されることはあってはならないと考えています。
個々の宿泊業者だけでなく、団体としても声を発していかなければなりません。